7.上宰之 ページ18
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上宰之A。いつからだったろうか、僕と彼女がセットとして扱われ始めたのは。
そもそもそんなに昔から一緒に居たのだろうか。
どうにも覚えも記憶もぼんやりしていて、ただ一つ印象に残っているのは、教室で誰とも喋らずに外を眺めている彼女の姿だった。
誰も彼女のことなど気に留めていないようで、幽霊みたいに生きている彼女を酷く不憫に思ったのを覚えている。
彼女は透明だ。
誰でも心へ通す癖に、誰にも見えない。通ったことさえ大抵の人間は気付かない。
Aはいつでも何かを隠して生きていて、僕はそれを何とも思っていなかったのだけれど、結局僕の家柄のせいで発覚してしまった。彼女もまた特殊な家で生まれたのだ。
一人隔離され、幼いながらにそれを理解している彼女が｢知りたくない｣と笑うのを何度も見てきた。
知りたくない。
本心は混じっているのかもしれない。それでも、無知でいたいと思う人間はこの世にいるのだろうか。否、いるわけが無い。
それは一種のマゾヒズムのように彼女の根底に存在している。
殴られたい罵られたい誹られたい人間はこの世にいない。そう言葉に出す人間にはその先の他人との関係を見出しているだけだ。愛して欲しいと望んだ相手が理想と違う形の拒絶で持って接するからこそ、それを享受すべく歪んだ心を抱える。
彼女にとって｢知らない｣ということは、両親達に唯一与えられた愛だった。そして、それが本当に愛なのだからタチが悪い。
知らない彼女を愛している、そう思うから彼女は知りたくないといつでも笑う。
何度問うても与えられる以外の知識を彼女は求めない。知りたい、教えて欲しい、という言葉が全て意味を成さないことをあの時とうに、知っていたのかもしれない。
既に諦めてしまった彼女のような人間を、僕はどう扱えばいいのか知らない。
そもそもとして僕は他人と関わることを最大限避けている。苦手というか、ただただストレスだ。僕の欲求が満たされればそれで良いし、僕と町のこと以外は特に興味が無い。
僕が彼女にしていることは、所詮他人の真似事なのだ。自身の言葉でも行動でもない。興味が無かったから他人との向き合い方も正直良くわからないままで、そして彼女も歪んでいるからこそ僕らはお互いに理解ができない。
不理解故に成り立つ関係は、彼女の知らないでいたい、という欲求を深く満たすのだろう。例えそれが意識的でも、無意識でも。
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さとう(プロフ) - コメント失礼します。とっても面白くて何回も読み返してしまいます！夢主ちゃんと雲雀さんの歪な関係がとてもグッときます。影ながらいつも応援しております。更新無理せず頑張ってください！ (2019年6月18日 23時) (
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作者名：銀竹 | 作成日時：2019年5月28日 20時
