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だけど、なんで焼き肉の店なのかは解らない。
もっと雰囲気の良いおしゃれな店にするべきだし、その前に『ご飯へ行こう=肉』の方程式が普段の僕らすぎると思う。
それでもこの店が個室もあって、店員の口も堅い、いわゆるそういう人達が使う店な事だけは評価してあげても良いかな。
ここでようやく僕は胸を撫でおろし、意気揚々と待ち合わせの三十分前にもう一つの入り口から入店して部屋に通されれば、なんと、そこには既にAヌナ(とマクヒョン)が座っていた。
「ヘチャン」
「、ヌナ、Aヌナ……!」
これが思っていたよりもずっと泣けて、立ち上がったAヌナの胸に勢いよく飛び込んだきり、だいたい十分くらいは言葉にならないほど泣いてたと思う。
途中でヌナの肩越しに不満そうな表情をしたマクヒョンと目が合ったけどすぐに無視した。
これからヌナを独り占めするのはヒョンなんだから今くらい良いだろ。ケチ。
「ヌナ、わぁ、本当に……会えるなんて……」
「ヘチャンにはもう一生会えないと思ってて、私、」
「寂しかったよ、僕はずっと。いつか会えるとも思ってなかった。僕はね、Aヌナとはもう会えないものだと思い込んでた」
「、ヘチャン」
「僕、ずっとヌナに謝りたかったんだ。あの時たくさん酷い事を言って、傷つけてごめんなさい、ヌナ」
「謝るのは私の方で、」
「なあ二人共、あの時っていつの話?」
「……マクヒョン、今大事な話してるから黙ってて」
「むっ」
「私もごめんね。ヘチャンにたくさん心配かけて、それなのに、わたし、」
「ああAヌナ、泣かないで……」
「いやAは泣いてないだろ。ヘチャニが泣いてるだけで」
僕との再会で感極まって口籠ったヌナに、マクヒョンは気の利かないことを言ってくるけど、どうしてヒョンは毎回こうなんだ。
「はあ」と大きく、大袈裟に、わざとらしく溜息を吐き出してヌナの手を取り、マクヒョンの隣から引っ張って、僕が座るであろう向かいの席に移動させた。
Aヌナを僕の横に座らせれば、今度はマクヒョンが溜息を吐き出す番だ。
僕に会えてうれしそうに笑うAヌナに微笑みかけながらこっそり視線を落とすと、ヌナの左手の薬指にはやっぱりマクヒョンと同じような指輪が個室の明かりを反射していて……
いや、やっぱユタヒョンとヤンヤンのにも似てない……?
うーん、気のせいだと思いたい。
気のせいじゃないなら僕も同じのが欲しい。
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さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…!作品の方また楽しんでいただければ幸いです! (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね!失礼いたしました...! (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜!!Twitterはしてないので教えられず……! (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せの | 作成日時:2021年8月2日 0時