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「その人がAじゃだめなの？」
「……私がいなくてもマークは幸せになれるし、そうなってもらわないと、だから、お願い、」
なんでAは、こうまでして自分から逃げようとするんだろう。
オレが好きなのはAで、Aが好きなのはオレだ。
Aは過去形でしか物を言わないけど、自分で言ってて辛そう顔をするAを見ていれば、今もずっとオレの事が好きなんだろうって、そうとしか考えられない。……多分。
どう答えればAは納得してくれるのか。
自分は周りの人達みたいにうまく言葉を操るような事は出来ないし、思った事をそのまま伝える事しかできない。
思った事だって、今は言えるか言えないか、難しい所だ。
だとしても、そうだとしても、
「オレはAと一緒にいた時が一番幸せで、だから、その……Aが隣にいないと、あの幸せは二度と来ないと思うから。だから一緒にいよう、オレは一緒にいたい」
「……でも、」
「これから先、辛いことはきっとたくさんあるし、どれも嫌だと思うくらいの選択肢を迫られる時が来ると思う。……それでもAが、オレ達二人でいる事を諦めなくて良いんだって思えるくらい、オレがAを大切にするから」
「マーク、」
「オレを信じて。Aが何も信じられなくても、オレだけを信じて」
Aが自分を見上げたまま、瞳に涙を浮かべている。
あんなに会いたくて、何度も夢にまで見たAが自分を見つめいてることが不思議に思えた。
捉えた手首から伝わる感触は、Aがここにいることを教えてくれる。
ふわふわとして覚束ない足を小さく一歩踏み出して、Aの頬に伝う涙を親指で拭った。
Aの、オレを呼ぶ声が擦れていき、胸はひどく高鳴って心臓の音が耳にさわる。
世界がぼやけて、光に溢れているのにまるで何も見えない。
息を吸い込もうとすると難しく、やっとの思いで空気を飲み込んでようやく、オレはAを自分の手で抱きしめることが出来た。
Aがオレの首元に顔を埋め、何度も何度も名前を呼ぶ。
呪文のように囁かれる「マーク」という言葉が、次第に自分の存在を形作っていくように思えて、欠けていたものを取り戻すようにAを強く抱きしめた。
(カーテンコールの向こう側・完)
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さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (
レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…！作品の方また楽しんでいただければ幸いです！ (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね！失礼いたしました...！ (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜！！Twitterはしてないので教えられず……！ (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せの
| 作成日時：2021年8月2日 0時
