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ヘチャニは良く言えば揺るぎのない口調で、悪く言えば意地悪そうなトーンで答えた。
実際ずっと助かっている。
何一つ文句が言えないでいると、ヘチャンは少し先の床を見ながら言葉を続けた。
「ねえマクヒョン、怒らないで聞いてくれる？」
「何だよ。いきなり」
「僕、ヒョンに嘘を教えたことがあるんだよね。マクヒョンがAヌナを忘れてくれないのは、僕がヌナの足跡を教えちゃうからかもしれないって」
「ヘチャニは……オレにAを忘れてほしかったのか？」
「最初の頃はね。……ううん、違うか。最近までずっと、諦めてほしいと思ってたよ」
「探す事を？」
「そう。じゃないとさ、いつまでも夢に見るんだ、僕」
「……夢？」
「うん。中身は内緒」
相変わらずヘチャニはこっちを見ないけど、けらけらと笑って見せる。
考えたことはなかったけど、こいつにだって自分と同じ様に、Aとの物語があるはずだ。
Aはいったい、ヘチャンにとっての何者だったんだろう。
オレにはずっと、二人が仲の良い姉と弟のように見えていた。
周りには生意気だったヘチャンが、普段の素行からは考えられないくらい大人しく、良い子に変わる存在。
それがAだったように思う。
二人が顔を寄せ合って鼻歌を歌い、笑い合う姿を自分たちはよく眺めていたのに、その姿も少しずつ薄く霧がかかったように霞んでいる。
目の前にいるヘチャンはどうなんだろう。
自分と同じ様に、その思い出が消えてしまう事を苦しんでいるのだろうか。
「ねえマクヒョン。最初はたくさんあった情報も、最近はほとんどないんだ」
「……だろうな」
「Aヌナはもう過去の人で、これじゃあ僕らだけがここから動けないでいるみたいだね」
そう言ったヘチャンが、恋しくてたまらない顔をしているように見えた。
好きだったんだろう。
それがどういう好意なのかは聞けないし、多分オレがAに抱えているものとはきっと違うんだろうけど、確かにヘチャニもAの事が好きだったんだ。
「それでも、僕は最後まで付き合うよ。誰がAヌナを忘れても、マクヒョンが諦めないなら、僕もそれに付き合う事にしたんだ」
「ヘチャン」
「そうじゃないとヒョン、地球の果てまで行きかねないからね」
(マークとヘチャン・完)
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さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (
レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…！作品の方また楽しんでいただければ幸いです！ (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね！失礼いたしました...！ (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜！！Twitterはしてないので教えられず……！ (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せの
| 作成日時：2021年8月2日 0時
