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マークを知らずに生きたとして、私はあの場所に笑顔で立ち続けることが出来たんだろうか。
開いたメールを眺めながら内容も読まずにただただ文字を追って、ぼんやりとそんな事を考えるけど、答えが出る前に私の意識を悠太くんへ戻した。
「マークって良い人でしょ、悠太くん」
『まあな』
「優しくて努力家で、我慢強くて。そういう良い人だから、私はマークに幸せになってもらいたいんだよ」
悠太くんは何も言わなかった。
気のない相槌をするだけで、否定も肯定もしない。
これで良いはずなのに。
そう仕向けたのは私なのに。
恋しくてたまらなくても、マークがいる“明日”がこれ以上来ないというのは、それでいてどうしようも寂しかったりする。
この思いはおそらく、簡単にはなくならないのだろう。
今更なくすべきだとも思わない。
だけどこれを、悠太くんにだって悟られたくないのは私のちっぽけな意地でもある。
「それに私が悠太くんに何も聞かないのは、マークから届くメールに近状報告が書いてあるからだよ」
『そういえばそうやった』
「あっ、決済終わったって。今航空券のURL送ったからちゃんと確認しておいてね」
『ありがと、後からやっとくわ』
「……悠太くんそう言って前にやらかしたよね？」
『じゃあ今日中に見る』
「今見てって」
『うるさいなぁ、もう。ちょっと待って』
悠太くんが不満そうにメールの内容を読み上げていくのを、少し遠くに聞きながら息を吐き出した。
人間は二回死ぬらしい。
一度目は肉体的な死で、二度目は誰からも忘れ去られた時だと言う。
私の死はきっと、マークからのメールが届かなくなった時に訪れるのだと思う。
マークがいつの日か諦めて、全てに終止符を打った時、私はいったいどうやって生きていくんだろうか。
永遠なんてものは言葉だけで、失った時間は決して取り戻せない。
それでも最高の瞬間は、少なくともあの場所で確かに存在していたように思う。
本当に幸せだった。
目を合わせて話をして、手を取って笑い合って。
その瞬間に浮かぶ喜びを受け止め、感情に蓋をすることが出来なくなるまで一緒にいることができた。
私はあのキラキラとした思い出の欠片だけで、ただそれだけで、きっと充分なのだと思う。
(私の話・完)
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さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (
レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…！作品の方また楽しんでいただければ幸いです！ (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね！失礼いたしました...！ (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜！！Twitterはしてないので教えられず……！ (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せの
| 作成日時：2021年8月2日 0時
