ep360 ページ13
—阿伏兎side—
それは予想外に異様な光景だった。
いや、実際に異様に感じたのは光景というより参謀の様子だったわけだが。
その参謀は今まさに俺の少し前で故障した機械のように固まっている。
ついさっきまでの余裕綽々な面影はどこへやら。
数歩先で寝息を立てている人間が信じられないとでも言うように硬直していた。
しばらくして俺の方を振り向いたその顔と言ったら……
ひでぇ顔……。
迷子になった餓鬼みたいな表情で俺を見上げる参謀に思わず笑えば、一瞬泣き出しそうな顔になってから、ゆっくりとベッドへと近づいていった。
そして高杉の傍らに立ったはいいが、段々と顔を険しくしていく様子に、考えてることが手に取るようにわかる。
「ちなみに言っとくが生きてるからな」
俺の声に肩をびくりと震わせて、それからゆっくりと息を吸い込む。
何をそんなに緊張することがあんのか……やけに小刻みに震えた指先で高杉の頰に触れた。
ゆっくりと何かを確かめるように優しく頬を撫で、そのままさらりと高杉の髪を指で梳く。
そして高杉の胸に耳を押し当てた。
鼓動に耳を傾けながら目を瞑った参謀。
しばらくして瞼を上げると、溜息と共に少し呆れたように笑って言った。
「呑気だなぁ晋助」
その瞬間、部屋の中が少し色めき立つのを感じる。
そりゃそうだ。
誰もこんなの聞いちゃいねぇ。
伊賀で俺らの部隊を半壊させるような策をこしらえて、さっきまで夜兎の中で1人平然としてたような奴が……あんな顔を見せるなんてことは。
儚げに細められた瞳も、涙を堪えて少し震えている声も。
今まで隠し込むみたいに包まれて見えなかった柔いとこがちらちら覗いてんだ。
それを見て夜兎の狩猟本能が突かれんのは避けようがない。言っちゃあなんだが生理現象だ。
だがそうしてる暇は実のところ無い。仕方なく口を開こうとした時
「浸ってるところ悪いが場所を移すぞ。ここもじきに危なくなる」
一足早く口火を切ったのは星海坊主だった。
「はい、行きましょう」
次の瞬間そう答えてすっと立ち上がった嬢ちゃんは、もう既に完全な参謀モード。
あーあ、戻っちまった。
少々残念に感じたのはきっと俺だけじゃない。
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ギラッフェ(プロフ) - 陽-hisa-さん» いつも楽しみにしてくださってありがとうございます。何よりもの励みになっています!今後とも楽しんでいただけると嬉しいです(^^) (9月2日 0時) (レス) id: 7a3023c2c7 (このIDを非表示/違反報告)
陽-hisa- - お久しぶりです。攘夷とこんなに上手く絡ませている作品、やはり私的にはこの作品が一番です。一番好きです。これからも楽しみにしています。応援しています。 (8月31日 19時) (レス) id: cd440b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - るぅさん» いつもありがとうございます!ベタ褒めしていただいて嬉しい限りです笑 今後ともよろしくお願いします! (8月22日 9時) (レス) id: 1bbdb8d99e (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - いつも読ませて頂いてます!大体どの作品も恋愛系の作品が多いのですが、占ツクで面白い作品に出会えると思ってなかったです笑コメント見させて頂きましたが、オチなしの結末を考えているとの事で個人的にホッとしました笑これからも応援してます! (8月21日 21時) (レス) @page48 id: 0469468a88 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひーさん» コメントありがとうございます!読み返してくださるのとても嬉しいです!今後ともよろしくお願いします! (8月10日 9時) (レス) id: da4440489d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2022年1月26日 0時