ep302 ページ5
―no side―
「ふざけんじゃねェ!一体局長が何やったってんだ!」
その頃、局長を拘束され解散に追い込まれた真選組は一堂に会して語気を荒げていた。
「喜々の奴、将軍暗殺の責任を全部なすりつけるつもりか!?」
「もう喜々の所に乗り込むぞ!どうせ真選組も潰される!だったらこの命、大将を救うために使うしかねぇ!!」
徐々に高まっていく熱気。
だが、そこへ打ち水のように冷たく鋭い声が投げ込まれた。
「それでも……生きろと言ったんだろ」
言ったのは土方だった。
「たとえ真選組が組織として消えても、散り散りになっても、それぞれが真選組としてやれる事をやれと――近藤さんはそう言ったんだろ」
その言葉は隊士達を諭しているようでもあり、土方が自分に言い聞かせてるようでもあった。
その場に留まっていた銀時も同じように近藤の言葉を反芻する。
「たとえ近藤さんの屍を越えても?」
だがそれまで沈黙を守り続けていた沖田のオブラートなど微塵も纏ってない言葉。その鋭さに思わず皆が息を詰めた。
「土方さん……そんな価値があるんですか。近藤さんを見殺しにしてまで腐った幕府に仕え、侍であることに」
んなわけあるか、と喉元まで出かかった言葉を煙草の煙と一緒に吸い込む土方。
「俺はそんなの御免だ。将軍も護れず、てめーらの大将も護れねェならそいつはもう侍じゃねェ。ただの腰抜けだ」
その固い眼差しに、土方は腹を決められてないのは自分だけだと気づくが退く訳にはいかなかった。
「好きにしろ。それがお前達の思う真選組なら俺は止めやしねェ」
まさか「好きにしろ」など言われると思ってなかった隊士達の間には動揺が広がる。
副長なら結局は「しゃあねぇ」と言って一緒に刀を取ってくれる――そう思っていた。
「どっちが正しいのか俺にももう解らねェよ。
ただ、近藤さんを死なせたくねェって気持ちはお前達と同じだ。お前達を死なせたくねェって気持ちは近藤さんと同じだ」
そう言いながら土方は暗くなった空を見上げる。
「俺にはもうお前達を縛る権限はねぇ。それでもなお、お前達の魂を縛るものがあるなら……それがきっと真選組にとって一番大切なもんなんだろ」
そしてそのまま石畳みを進んで離れて行く背中。
「ならそいつを信じて戦え。それがどんな道であろうとも……お前達は真選組だ」
最後に振り返った土方の表情は鬼の副長と呼ぶにはあまりにも人間味のあるものだった。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時