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ep337 ページ40

なんとか全員離陸には間に合ったらしい。

ふぅ、と安堵の溜息を吐きながら立ち上がったその時、

隣の副長が息を呑むのが聞こえた。


振り返れば、タラップにしがみついていた奈落がむくりと立ち上がり、刀を振り上げているのが目に入る。



「——っ!局長ッ!!」


咄嗟に佐々木局長に叫ぶも、何故か彼は柔和な笑みを浮かべる。


まさか……


私が目を見開くのと同時に、彼は傍らにいた信女ちゃんとテツを庇うように突き放すと——


ずぶっ……


自ら受け入れるかのように奈落の刀に刺し貫かれた。



「——ッ!」


誰もが声にならない声を出したその時、佐々木局長がはっきりと私を見据えて口元を動かした。


声こそ聞こえずともなんと言ったのかは直ぐに分かった。


私は俯いて、脳を殴りつけるように働かせながらそれ以外の方法を考える。

……が、そんなもの存在しないことは分かっていた。


それと同時に佐々木局長の背後で奈落の船体が近づいているのが視界に入る。


彼はそれも知っていてああ言ったのか……



唇を噛み締めながらもう一度見た彼は、何か長年つっかえていたものでも取れたかのような穏やかな表情をしていた。


そんな顔、似合わないのに……




口の中に広がる鉄臭い味を感じながら、私は言った。



「……船のタラップを閉めて」



それをすれば、佐々木局長が崖の底へと投げ出されることになると分かっていながら、

私は緊急ボタンの傍らに立つ隊士に言った。



「し、しかしそれでは局長が…!」

「いいから早く!!」


躊躇する隊士をよそに、奈落の船はこちらに向かって砲撃の準備をしている。
このまま撃たれればここにいる人間は全滅する。



「……出来ません!!」

「——ッ!ならどけッ!!」


唇を歪め、今にも泣き出しそうな顔で叫ぶ隊士を突き飛ばして


ガコンッ……!!


私は殴りつけるように非常ボタンを押した。



それと同時に佐々木局長の立つタラップが徐々に上昇する。
そして彼を虚空へと放り出すかに思えたその時——




ドゴォォォン————!!




奈落の砲撃がタラップを粉砕して佐々木局長を崖の底へと突き落とした。



「異三郎ォォォォォオオオ!!!」



信女ちゃんの悲痛な叫び声を聞いても、私は背を向けるしかなかった。


 
 

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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時

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