ep335 ページ38
「ざっけんな!!近藤さん置いていけるわけねぇだろぉが!!」
「分かってます!!近藤さんは私が運び——……」
そこまで言って私は言葉を飲む。
さっきまで近藤局長がいたはずの場所が、もぬけの殻になっていたのだ——。
焦って眼を走らせたその時、混乱の中心に静かに佇む近藤局長がいた。
「……え…」
訳もわからないままその姿を眺めていれば刀を振り上げ、いつものあの表情で笑ってみせる。
そして副長が刀を振り下ろすのと同時に朧を斬った。
「近藤局長……」
今まで懸命に歯を食いしばり、刀を振り回していた隊士達が振り返る。
「忘れ物を…思い出してな……。三途の川をクロールで戻ってきちまった」
気づけば彼がいた木の下には怪しげな丸薬が転がっていた。
はぁ、ヅラか……まったく、またややこしい物を作って。
「言っただろ、地獄に行こうがもうお前らをおいていきゃしねェって」
そう言った近藤局長を涙ぐみながら見つめる隊士達。そして副長は近藤局長に肩を貸しながら笑う。
「なら閻魔だろうが仏だろうが、もう二度とアンタを渡すわけにはいかねぇな」
その様子に目頭が熱くなるのを感じながら、私は静かに佐々木局長の元へ駆け寄った。
さっき斬られた背中の傷は深いが……
「正直、止血してる暇があったら逃げるのが先決ですね。行けますか?」
肩を貸す私に少し驚いたような表情をする佐々木局長と信女ちゃん。
「あちらに行かなくていいんですか……」
そう言って彼は近藤局長達の方を見る。
「はぁ……何言ってるんですか。私の雇い主は貴方でしょう」
私は地面に座り込んでいた2人を立ち上がらせて続ける。
「それに感謝してるんです。近藤局長を守ってくれたことも、貴方自身が無事だったことも……。ありがとうございます」
「私はちっとも面白くありませんがね。結局は貴女の予想通り真選組を助ける羽目になりましたし」
「なぁに。彼等は勝手に助かっただけですよ」
言葉とは裏腹に、その声は少し嬉しそうにも聞こえた。そんな軽口が叩けるなら大丈夫だろう。
しかしそう安堵したのも束の間、頭上から轟音が降り注ぎ、足元に影がさす。
見上げた先には砲撃の構えを見せる奈落の船。
ドォン——ッ!!
砲撃で弾き飛ばされた私は起き上がって目を凝らす。
視線の先には近藤局長と副長がいたが、私の背後で既に味方は散り散り。
挙句、佐々木局長の姿は見当たらなかった。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時