ep333 ページ36
—貴女side—
何故こうなったんだろう……
先刻までの私達の威勢は跡形も無く消え去って……目の前の惨状にただ立ち尽くした。
皆と必死の思いで辿り着いた先の景色が……これ……?
背中から血を噴き出して地に倒れていった佐々木局長はコマ送りのモノクロ映画。
その先では頭を斬りつけられた近藤局長が木に身体を預けて眠っている。
遠目から見ても彼が息をしていないことはあまりに明白だった。
「真選組局長、近藤勲。見廻組局長、佐々木異三郎……相違ない」
木霊のように響く奈落の言葉。
それと同時に周囲ではしゃらりしゃらりとあの不快な錫杖の音がする。
……囲まれてる。
それは分かるのに足は地面に縫い付けられたようになって動かなかった。
皆を逃さなくちゃいけない。
それなのに脳味噌はまるで一滴の血液も流れていないかのように冷たく冷え切って、何も浮かばなかった。
「貴様達が掲げていた旗も闘う理由ももう無い。これで終わりだ」
死 刑宣告のようなその台詞に力が抜ける。
また守れなかった……
迫る奈落の大群をどこか他人事のように眺めながら、脳裏に映るのは松陽、将軍様……そして2人の局長のこと。
辺りを見回すも、みんな眼の光を失って刀を握る手にもはや力は無い。
……あぁ、なんだ。
私がここで何か策を思いついたところでもう意味なんてないじゃん。
こんな絶望のどん底で誰が闘えるって言うんだよ。
誰が————……
「まだ終わってねェェェエエエエ!!!」
だがその時、声がした。
何度も聞いたあの声がした。
「勝手に終わってんじゃねェェェエエエ!!」
いつだって私を導いてくれる……
「前を見ろォォォ!!剣を握れェェェ!!」
魂を揺さぶるような
「戦えェェェ!!真選組ィィイイイ!!!」
銀時の声。
それに呼応するようにして隣にいた副長は奈落に斬りかかり、隊士達も刀を握り直して一斉に応戦し始める。
その様子を見てやっと血が通い出した脳味噌を働かせる。
「総員、ここからの脱出を最優先に!奈落を全滅させる必要はないから逃走路を開くことだけを……!」
しかし私の声は敵味方の阿鼻叫喚にかき消されて誰の耳にも届かない。
その時になって初めて私は違和感に気づいた。
局長達を失ってただ躍起になって刀を振り回してるだけの彼等の姿。
そこからは自分達が生き残る意思なんて微塵も感じられなかったのだ。
「……このまま死ぬつもり……?」
837人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時