ep330 ページ33
—no side—
「隊士達には俺たちが戻らなくても離脱しろと伝えてある」
Aの問いにそう答えた土方。それを聞いた彼女は不機嫌そうな表情を隠しもせずに言った。
「諦めてるんですか?そう聞こえますけど」
「あぁ正直な話、さっきまではな。だが今は違ぇ」
ニヤリと笑う土方にAは「あぁ、そういうことですか」と不敵な笑みを浮かべる。
「考えてあるんだろ、参謀。とっておきの秘策を」
「勿論ですとも」
その台詞で周りの隊士達の眼に光が戻ってくる。
そして満を辞して息を吸い込んだAは、意気揚々と言い放った。
「奈落ぶった斬ってとにかく進む!」
少年漫画の主人公さながら拳を固めて誇らしげなA。しかしその様子と反対に、辺りには重い沈黙とお通夜のような空気が流れた。
その沈黙を破るように溜息をついた土方は
「んなことわかってんだよ!!アホかてめぇは!?それをするのにいい秘策がねぇかって聞いてんだろぉが!!」
当然、雷の如きツッコミを炸裂させた。
だが当の参謀は
「そんな秘策あったらこっちが知りたいですよ!!あるなら言ってみやがれ腐れ副長!!」
逆ギレする始末。
「どさくさ紛れにディスってんじゃねぇよ!?てか元はと言えばテメェがこんな計画立てるからだろぉが!」
「うっわ!それを今言いますかね!?だいたいこの計画立てたのは私じゃなくて佐々木局長で——」
その時、ガサリと木々を揺らす音。
瞬時、現れた奈落がAの背後で刀を振り上げる——
「橘ッ!!」
目を見開いて顔色を変えた土方。
嫌な汗が噴き出して息が詰まったその瞬間——
ドサッ……
と重い音がして地面に奈落の屍がひとつ転がる。
何が起きたか分からず立ち尽くす皆の目の前で、刀についた血を振り払うA。
まさかと思って見てみれば、奈落は首筋を深く突かれて大きな血溜まりを作っていた。
皆が唖然としながら見つめる中、彼女は何事も無かったかのように自分の髪を結い上げながら言う。
「改めて確認しますが、このまま奈落をぶった斬って進みます。敵の接近は私が“視て”知らせますから比較的動ける人間で周りを固めてください。先陣は副長と私で切り開きます」
そして髪を結い終わるとふぅ、と息を吐き、土方達を振り返って尋ねた。
「……異論は?」
あっても言えるわけがなかった。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時