ep322 ページ25
避難した木の影で歯を食いしばる近藤。
一度雇ったからこそ、仲間だったからこそわかる。橘Aが敵に回ることの恐ろしさを。
焦る頭に浮かぶのは今までに彼女が立てた反吐が出るほど綿密な策略の一つ一つだった。
思わず押し黙った近藤を横目に
「……耄碌したか、A!」
桂は痛む脇腹を押さえながらAを責めるように語気を強めた。
しかし当の本人は
「耄碌してんのはそっちでしょ。大丈夫?血ぃ足りてないんじゃない?」
などと心配など微塵も感じ取れない様子で可笑しそうに笑っていた。
「さて、世間話はそこまでにしていただきましょうか」
そう言って話の腰を折った佐々木がおもむろに携帯を取り出して首を傾げる。
「いつも通りの既読スルーか、あるいは信女さんの方も何かありましたかね」
覗き込む画面には『森でゴリラを見つけたお to のぶたす』の文字。
「まぁ、そういう事です近藤さん。残念ながら既にこの島は我々が掌握しています。このままではみんなアナタのために死んじゃいますよ」
再び銃口を構えた視線の先に、佐々木は続ける。
「みんなアナタを救うためにここへやって来たんですから彼等を救う方法は簡単です。
————アナタが死ねばいい……」
それを横で聞いていたAは小さく「んな乱暴な」と笑う。
「さぁ、そこから出て来てください」
だがその台詞から間髪入れずに、呻き声と血飛沫があがる。
そして近藤と桂は見廻組の隊士を斬り伏せながら、一気に走り出した——。
「……まったく、手間がかかりますね」
「もともと言って聞くような人達じゃないですから」
溜息混じりに近藤の後ろ姿へと銃口を構える佐々木。
しかし構えはしたものの、目を瞑ったままなかなか引き金を引こうとしない様子にAは問う。
「……撃たないんですか」
その瞬間、ハッとしたように目を開けた佐々木は引き金を引いて近藤の足を撃ち抜く。
それを黙って見ていたAはゆっくりと佐々木の顔を覗き込んだ。すると佐々木は目も合わせずに言う。
「……狙いを定めていただけですが、何か?」
「……いいえ別に。お見事でした」
ふいと顔を晒した佐々木に、Aはにこりともせず賞賛を送る。
そして彼女は足を撃たれ、地べたに這いつくばったまま見廻組に包囲される近藤と桂へ、視線を移した。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時