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ep280 ページ33

私はこの眼のことを解決する気が無かった――……?




晋助の言葉に凍りついたままの私。

だが晋助はそんな私に構うこともなく、まくし立てる。


「そりゃあ不幸なことにあぐらかいて嘆いてる方が楽だもんな!?」



違う――……


その一言がどうしても出てこなかった。

晋助の言葉を否定できなかった。

それがつまり私の答えなのだろうと悟った。



「こっちだってそんな不幸オーラ剥き出しな奴がいたら嫌でも気にするしかねぇだろ!!」


激しいはずの雨風の音すら押し除けるくらい、晋助の声は私のど真ん中に響く。


「なのにこっちが気にしたら気にしたで土足で入ってくんなって被害者面かよ!?」


……それもそうだ。


「だいたい本当に触れられたくないならサッサと出てけばよかったじゃねぇか!!」


極めつけのその言葉に、私はすっかり気が抜けて思わず路地裏に座り込んだ。


この眼のことを知らず知らずの内に諦めて……

だけど一人で抱えるには辛くて……

なのに手を差し伸べてくれた人には性懲りもなく噛み付いた。




でも、なら……


「……どうすれば良かったの……」


「そんなの悩むことじゃねぇよ。お前はいつだって出て行けた。でもそうしなかった!本当は誰かに助けてほしかったってことだろ!?」


晋助の声が視界いっぱいに降り注ぐ。



「なら、俺達に言え!信じて頼れ!話したくない秘密なら無理には聞かない。お前が言っても言わなくても隣にいるぐらいしてやるよ!」


「信じて、頼って…どうするの……」


膝を抱えた私に晋助は言い放った。


「辛い時にお前の感情を俺達に吐き出せばいいんだよ。それぐらい出来んだろ?どうせ解決しない問題ならせめて笑ってろよ」


言葉は刺々しくて鋭いのになぜか胸が熱くなる。


思わず押し黙った私に、晋助は「あと……」と言って私が無意識に持ち出していたはさみを手に取ると……



ザクリ――……



と私の前髪を切り落として言った――――。




「前髪はもう長くすんな……

……長いとお前が泣いてんのも分かんねぇから」




そう言われて初めて、私は自分の頰をつたう温かい涙に気づいた。





「……帰るぞ」


そう言って手を差し伸べる晋助を私はゆっくりと仰ぎ見る。


初めて自分の目で見た晋助の瞳は、強く……そして美しかった。




 

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ギラッフェ(プロフ) - ゆうゆさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さってて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!テストに間に合ってよかったです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうゆ - 更新凄く楽しみに待ってました!応援してます、これからも頑張ってください!! (2021年2月26日 1時) (レス) id: 90e018deaa (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - めちゃめちゃ楽しみにしてました!これからの展開が楽しみですこれで明日のテスト頑張れます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: a90e951796 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - じゅうぞうさん» コメントありがとうございます!なかなか更新できずすみませんでした。応援ありがとうございます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2020年8月29日 0時

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