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ep266 ページ19

段々と滲み始める視界。


しかしここで涙腺を緩ませるわけにはいかない。

彼等が死なないと言ったのは私だ。その私が涙を流すわけにはいかない。

……今生の別れでもないくせに。



そう思って眼にグッと力を入れたその時



「前言撤回ッ!!俺達は必ず生き残る!!」



局長の声が大きく響いた。



必ず生き残る、生きて帰る――――そう誓っているような強い眼差しに私は頷いた。


そうだ、それでいい。それがアンタらだ。


「だからA君、どうか将軍様を――」

「その先は言わなくても大丈夫です」


そして言葉を続けようとした局長を遮り、



「私は松平長官の参謀として必ず将軍様を守ってみせます」


彼等に背を向けて、進むべき道を見据えた。



「橘、一応言っておくが」


そこに副長の不服そうな声を聞く。



「テメェはまだ真選組の参謀だからな」

「……え?」


思いもしなかった台詞に思わず振り向けば、



「契約満了の送別会やってねぇだろ。だからまだ“契約満了”じゃない」


そう言って副長はにやりと笑った。



「……ははっ、なんですかそのブラック企業みたいな言い訳」


頰が緩んだ私に局長は言う。



「帰ったら一緒に旨い酒でも飲もう」

「そうですね。早く帰って来ないとお二人抜きでやりますよ、ちなみに全部経費で」


「それは帰らないわけにはいかねぇな」



ははは、と橋のこちらと向こうで笑い合う。




そして




「じゃあ、また後で」


再び2人に背を向けて、ゆっくり歩き出した。


すると横を歩く銀時が私の肩に手を置く。


「……よく言った」

ふと見上げれば満足そうに笑みを浮かべていた。
それを見て思わず肩の力が抜ける。


「……だって私が言うしかないじゃん。仲間なんだから」



そして私は将軍様のところまで行って頭を下げた。


「お待たせして申し訳ありませんでした」


1秒を争うこの状況下。

局長達のためとは言え、本来一刻も早く逃げるべき将軍様を足止めしてしまったのは判断としては正しくなかった。


だが、彼は「構わん。頭を上げてくれ」と言う。

窺い見たその表情は柔和でいて、さっきまでの迷いは薄れたかのような、しっかりとした眼差しだった。



「これは必要な時間だったのだろう……そなた等にとって」


「……はい」




そう答えて、私達は再び抜け道を目指して走り出した。




 

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ギラッフェ(プロフ) - ゆうゆさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さってて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!テストに間に合ってよかったです。これからもよろしくお願いします! (2021年3月1日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうゆ - 更新凄く楽しみに待ってました!応援してます、これからも頑張ってください!! (2021年2月26日 1時) (レス) id: 90e018deaa (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - めちゃめちゃ楽しみにしてました!これからの展開が楽しみですこれで明日のテスト頑張れます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: a90e951796 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - じゅうぞうさん» コメントありがとうございます!なかなか更新できずすみませんでした。応援ありがとうございます! (2021年2月26日 1時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2020年8月29日 0時

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