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ep192 ページ45

自分の脚が鉛のように重たい。



私はあと数歩が踏み出せず、帰るべき筈の屯所の前で立ち尽くした。


分かってて引き受けた仕事だ。でもその実、あの時はここがこれほど大切になると思ってなかった。



「……ははっ」


月を見上げて思わず苦笑。
結局、自分の読み違いが元凶か。




「……落ちたな、参謀」


月の光に目を細めながら皮肉をたっぷり込めて自嘲した。



 




その時――――



「あぁ、落ちるも落ちるもいいとこだ。今何時だと思ってやがるクソ参謀」


ぎょっとして屯所に向き直れば、そこには副長。
思わず茫然としていると


「A君の帰りが遅い遅いとトシが騒いでな」

そう言いながら局長が笑った。



「……えっと……今夜は遅くなるって連絡入れませんでしたっけ?」


段々と頭が回り始めて、尋ねれば


「あぁ、あったとも。だがな、とっくに日付は変わってんだよ。遅いにも程があんだろぉが」


まるで親のような言い草。
煙草に火をつけながらのその言葉は乱暴に違いないが、何故かほっとした。


「あと5分遅かったら、サイレン回して江戸中探し回るとこでしたぜィ」

「……はは、それは困るね」


沖田君はいまいち覇気のない私を物珍しそうに見たかと思えば、大きなあくびをした。



何だろう……。何でもないことなのにこの風景がやけに温かく感じる。



「まぁ、何はともあれ無事に帰って来てくれてよかった!」


そう言って局長の威勢のいい笑い声が響いた。

それを沖田君が「近所迷惑ですぜィ」といさめれば

「テメーのバズーカもどっこいどっこいだろぉが」と副長に突っ込まれる。



そんなかけ合いを眺めていれば、自然と余計な力が抜けていった。
やれやれと思いながら、深呼吸をする。




……今はいいことにしようか、晋助。

晋助も私も、今は仲間と呼べる人達がいる。

それでいいことにしようか。





私は先行く彼等に引っ張られるようにして屯所の門をくぐった。




「ただいま」




 

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ギラッフェ(プロフ) - 腐った女子さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてすごく嬉しいです!励みにさせていただきますね!! (2020年5月30日 15時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
腐った女子 - いつもこれが更新されるのを励みにしてます(笑) 更新頑張って下さい! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 59a5a46759 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 水神の狐さん» コメントありがとうございます!この回、性転換回というより野糞回だな…と個人的には思ってます笑笑 これからもよろしくお願いします! (2020年5月1日 23時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
水神の狐(プロフ) - 安心と納得の野糞wwwめちゃめちゃすきです!!これからも更新頑張ってください! (2020年5月1日 18時) (レス) id: 5a6fe00bf5 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ジャスタウェイさん» ありがとうございます!もうお名前からして同志って感じで嬉しいです!これからも宜しくおねがいします! (2020年4月13日 16時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年9月17日 19時

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