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ep191 ページ44

「今の晋助……」


試しに言葉にしてみたものの“今の”なんて枕詞、しっくりとは来なかった。


止めた足にコツンと控えめな感触がして、見ればやはりさっきの小石。


それを見つめながら思う。



今の晋助――

しっくり来ないにせよ何にせよ、きっと私はそれを知らないんだろう。私の記憶の中にいるのはあくまであの頃の晋助なのだから。


でも、未だに私はその“今の高杉晋助”とやらを知らないと切り捨てられないでいる。


本当に私の知らない晋助ならこんなに、“昔の鬼兵隊”にそっくりの隊を作り直すとは思えないのだ。

どうしたって今の鬼兵隊は私の知ってる鬼兵隊に重なる。

嫌でも感じる。
戦いのためだけに集まったわけじゃない。普段は小馬鹿にし合うけど、背中を預けるには躊躇はない。


そういう血生臭いだけじゃない繋がりを……。



グッと唇を噛み締めて小石を思い切り蹴り直せば、カツン…と何かにぶつかる音。

顔を上げればそこには『真選組屯所』の文字があった。




「せめてもう少し違ってくれてれば……」


思わず漏れた呟き。


そう……そしたら、迷う必要なんて無かった。


だってまるで同じだ。

過去の失敗を取り戻すべく真選組を守ろうと決めた私と、過去に失った仲間を取り戻すべく鬼兵隊を復活させた晋助……


何が違うって言うんだ。


痛いほど分かるその心情を、苦しみを、迷いながらも辿り着いたその答えを……踏みにじる権利なんて誰にもない。

ましてやあの時、晋助から鬼兵隊を奪った挙句、逃げた私にはある訳もない。


自分は真選組という仲間を手にしておきながら、また晋助から仲間を奪うのか……?


あの時、守れなかったものをまた斬り捨てて……。





でも分かってる。そんな甘いこと言ってたら、それこそ自分の信念すら通せなくなること。

4人と一緒に戦ったあの過去をいつか肯定できるように、いま大切な人達のため、彼等の信念のために戦う。

やっと辿り着いたその答えを守らなくてはいけない。




今の私は真選組の参謀なのだから――――。





 

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ギラッフェ(プロフ) - 腐った女子さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてすごく嬉しいです!励みにさせていただきますね!! (2020年5月30日 15時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
腐った女子 - いつもこれが更新されるのを励みにしてます(笑) 更新頑張って下さい! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 59a5a46759 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 水神の狐さん» コメントありがとうございます!この回、性転換回というより野糞回だな…と個人的には思ってます笑笑 これからもよろしくお願いします! (2020年5月1日 23時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
水神の狐(プロフ) - 安心と納得の野糞wwwめちゃめちゃすきです!!これからも更新頑張ってください! (2020年5月1日 18時) (レス) id: 5a6fe00bf5 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ジャスタウェイさん» ありがとうございます!もうお名前からして同志って感じで嬉しいです!これからも宜しくおねがいします! (2020年4月13日 16時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年9月17日 19時

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