ep166 ページ19
「隠れんぞぉー」という銀時の言葉とともに城から出た一行は燦々と輝く月を見上げていた。
夜闇をすべて照らし出すようなその光に目を細めてそれぞれの家路へと歩き出す。
その中でふと一人……Aだけが足を止めた。
「どうした橘?」
振り返って声を掛けた土方に
「あー……皆さん先帰ってて下さい。私ちょっと夜風に当たってから帰りますんで」
ニコリと答える。
その笑みに胡散臭さを嗅ぎ取った沖田がすかさず
「……夜道に一人は危ねェですぜィ?俺も一緒に帰りまさァ」
と言ってついて行こうとするが、土方がその首根っこを掴んでパトカーの中に引きずり込んだ。
「俺達は先に帰んだよ」
ワケありげな雰囲気に沖田は仕方なくそれを聞き入れた。
ブロロロロロ……――
真選組の車が走り去ったのを確認するとAはふらりと北の城門に向かう。
そしてしばらく行った所に停まっていた車の窓ガラスを軽くノックすると、扉を開けて乗り込んだ。
「お疲れさまです。報告に参りました」
「おォ、ばなっちゃん。お疲れさん」
そして中で待っていた松平に軽く会釈をして座席に腰かける。
「いやァ……今回の件は気分悪い思いさせてすまなかったなァ」
開口一番の謝罪にAは少し不機嫌な色を滲ませた。
「謝らないで下さい。今回の結末の原因は全て私の戦略ミスです」
「いや、でも……」
そう歯切れを悪くする松平にAは冷たく有無を言わさぬ様子で言い放った。
「同情じゃなくてもやめて下さい。私も命を預かるプロです。それが敵の命だろうと味方の命だろうと重みは同じです。
今回はそれをみすみす奪わせてしまった……」
鋭い眼光でどこか一点を見据えているような視線に松平は一瞬肝が冷えた。
だがそれを隠してまるで呆れたとでも言うようにゆっくりと息を吐き出す。
「そんなふうに毎度毎度、死んだ奴らの命背負って……そのうちばなっちゃん自身が潰れるだろォ……」
「潰れても本望ですよ。これが私の義務であり、罰であり、そして…………救済なんですから」
――亡くなった命を背負うことすらできなくなったら――……それこそ私は何のために参謀という職にしがみついているのか……分からなくなる。
Aは息を詰めた様な表情で俯いた。
それを見た松平が仕方なく
「まぁ、ばなっちゃんの人生だァ。好きにすればいいけどよォ……」
とその話題に終止符を打ったのだった。
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ギラッフェ(プロフ) - 腐った女子さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてすごく嬉しいです!励みにさせていただきますね!! (2020年5月30日 15時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
腐った女子 - いつもこれが更新されるのを励みにしてます(笑) 更新頑張って下さい! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 59a5a46759 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 水神の狐さん» コメントありがとうございます!この回、性転換回というより野糞回だな…と個人的には思ってます笑笑 これからもよろしくお願いします! (2020年5月1日 23時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
水神の狐(プロフ) - 安心と納得の野糞wwwめちゃめちゃすきです!!これからも更新頑張ってください! (2020年5月1日 18時) (レス) id: 5a6fe00bf5 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ジャスタウェイさん» ありがとうございます!もうお名前からして同志って感じで嬉しいです!これからも宜しくおねがいします! (2020年4月13日 16時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年9月17日 19時