【銀魂】前職：攘夷四天王専属参謀 参

ep106 ページ9

ある日の晩、書類を提出しに局長の元に向かっていた私は、


「あんたらは何も分かってねぇ……」


バスケでわいわい盛り上がる隊士達を他所に、神妙な空気で話す佐々木鉄之助と局長を見つけた。


「兄貴を敵に回したらここも俺と一緒に潰されるかもしれねぇってのに」

肩をすくめてそう言うテツに足を止める。

警察組織を潰すような力さえ持つその兄貴とやら、一体何者なんだろう。


「どうせ居なくなってくんねぇかって思われてんだろ？
妾の子ってことでずっとそういう眼で見られてきたからな。俺にゃ分かるんだよ」


少し泣き出しそうなテツの声を私は独り密かに聞いていた。



「なぁバラガキって知ってるか？テツ」

そんな時、不意に局長が尋ねた。

バラガキ？……知らないな。


「近づけば棘が刺さるような手のつけられない暴れん坊を俺の田舎じゃそう言うんだ。
アイツのことさ………………バラガキのトシ」



私は雲に隠れた月を茫然と眺めながら副長の過去を聞いた。

副長が妾の子だということ、腹違いの兄を守るためにその手を血に染めてしまったこと。
そしてそれ以来、家に帰ることもなくバラガキとして刀を振り回す日々だったこと。


当たり前だが、副長はそんなことを匂わせたことはない。今の彼とは重ならない過去に驚いた。


「アイツがお前を庇ったのはきっとお前の気持ちが分かったからだろう。……はみ出し者の気持ちがな」


その立場に立った人間にしか分からないものってのは沢山ある。
そうじゃない人にどれだけ語ってすがったところで、やはり理解されないことはある。



「だがな、アイツは逃げなかった。イバラの中に身を置いてさえ、その歩みは止めなかったぞ」



……成る程。それで今の副長があるわけだ。
規律を重んじ、曲がったことは許さない。でも他人に情が厚くてお節介。


「みんな同じだよテツ。ここにいるのはお前と同じはみ出し者や落ちこぼればかりだ」


勿論、私も。


「だがちょっとでもマシになりたい、そう思って足掻いた先で俺達は出会ったんだ」


そう、人生ってのはそういう風に出来てる。
私があの時……松陽に……アイツらに出会ったのと同じように――。


あとはそれを自分が受け入れるか、それとも斜に構えて拒絶してしまうか……。それだけの問題だ。





「いつでもイバラを行く……バラガキであれ」





　

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