ep45 ページ47
目深に被っていたフードを外して深く溜息を吐く。
誰だって試されたり値踏みされるのは嫌なもんだ。
挙げ句の果て、仕掛けたのはそっちなのに指摘した途端、御庭番衆の視線の鋭いこと鋭いこと。四捨五入したらほぼ殺気だよ、その視線。
「……さすがは攘夷四天王の――……」
私はその言葉の先を言おうとする松平長官の口を塞いだ。
「今回の契約はそれを不問にするという条件の筈です」
さすがに私だって天下の警察庁が私の過去を把握していないとは思っていない。
……というか、それを知っていて依頼をしてきたのは長官の方だ。
「オジサンも試すような真似したのは悪いと思ってるよォ」
謝る気があるのかないのか……。
イマイチ捉えどころのない彼の口調に、やれやれと前髪を掻き上げて窓の外を眺めた。
私達を乗せた車はただ江戸城の周りをぐるぐると回り続けている。
真選組の彼等は知らないだろうが、私が雇われ、直接契約したのは真選組ではない。警察庁長官だ。
松平片栗虎によって雇われ、真選組に派遣されているという立場。つまり直轄の上司はあくまでこのいけ好かない長官ということになる。
「でも将ちゃんのお忍び旅行プランを立ててほしいってのは本当なんだよ……頼むよォばなっちゃん」
「……頼まれずともやりますよ。仕事ですから」
頬杖をつきながら不機嫌に答えると、目の前の影武者がおろおろし始める。
「騙してしまってすまない……」
「貴方が謝ることじゃないでしょう」
眉尻を下げてしゅんとする影武者に、こっちが悪者になったような気分になってこれまた居心地が悪い。
「1日あれば十分です。あとはお忍び旅行について行けばいいんでしたっけ?」
「さすがばなっちゃん。話せばわかるねぇ」
大袈裟に私の肩を叩く長官に私は言う。
「報酬は大江戸限定抹茶シュークリーム20個で宜しくお願いします」
「シュークリーム?そんなんでいいのか?」
「えぇ。長官ご自身で開店前から並んで1日20個限定の品を全て買い占め、精々他のお客から冷ややかな視線を注がれてください?」
「……地味に心えぐるやつじゃん、性格悪ぃ……」
やれやれ人聞きの悪い。これくらいで容赦するのを寧ろ感謝してほしいくらいだ。
窓の外に放っていた視線を戻して、私はにやりと笑った。
2844人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ギラッフェ(プロフ) - からちぇさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも応援お願いします! (2020年9月11日 22時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
からちぇ - ドストライクな作品でした!めちゃくちゃ好きです (2020年9月10日 19時) (レス) id: b750728265 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 今井月華さん» コメントありがとうございます!ちょっと気を抜くとすぐ体調崩しちゃいますからね、気をつけます。月華さんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ハニーさん» ご心配ありがとうございます!これからインフルエンザの季節ですし、ハニーさんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
今井月華(プロフ) - お疲れ様です。体調にはお気をつけ下さい^_^ (2018年11月2日 21時) (レス) id: 7d138352b8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年10月1日 22時