鬼滅の刃 痛みの感じぬ子 弐

陸拾捌 ページ28

翌日。








鴉に連れられてやって来たのは、大きなお屋敷。






宇髄邸だ。









｢藤の家紋の家も随分と大きかったけど、ここはもっと大きいなぁ…｣









コンコン、と門を叩くと、綺麗な黒髪の女の人が出てきた。









一つ結びから流れる長い黒髪が美しい。









奥さん、だろうか？









｢どなたですか…ってあぁ、こんにちは。

今日から柱を回るAちゃんね？

天元様の言ってた通り、可愛らしい顔立ちね！

どうぞ、いらっしゃい｣









｢あっ、こんにちは、本日は1日よろしくお願い致します！｣









屋敷の中に招かれながら、Aの頭の中には大量の疑問符が浮かんでいた。









先程この美人さんが言った言葉は、明らかに…




男に向けて言う言葉ではないだろう。









可愛らしい顔立ち？









それに、名前に"ちゃん"を付けてるあたり、







これはまさか…









｢あ、のー｣









｢ん？どうかした？｣









｢僕のこと、女だと思ってます…よね？｣









｢ええ、そう聞いているけど…あら、もしかして違った？｣






やはりか。




なんだってこう間違えるのか。



いや、女だけど。









髪だって短いし、





口調も気をつけているし、





なんなら力だって強いし、






胸は潰しているし、









…他にどこがいけないというのだ。








───────


Aが自分の顔が傍から見て男が一目惚れする程の顔の持ち主だと気づくのは、まだ遠い話である。


───────







｢すみません、僕男なので…女顔なのは分かってるんですが、女の子扱いされるとどうにも…生意気言ってすみません｣









｢そうだったの！もう、天元様ったら、失礼なことしちゃったじゃない…ごめんね、可愛いなんて言ったから気を悪くしたわよね？｣









｢あ、いいえそんなことは。ただ、男なのでそれだけは知っておいて欲しいです｣









｢分かったわ。本当にごめんね｣









向こうでは割と中性的な男の子だ、って言われることが多かったけど、こっちではどうにも女に見られがちだな…女だけど！









あまりにも申し訳なさそうに言うものだから、｢もう大丈夫ですよ｣と微笑むと奥さんはスっと真顔になった。









｢あの…？｣









｢本当に可愛いわね…天元様の継子にぜひなってもらわないと｣

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