非日常・髪梳き ページ6
ふわりと。
櫛が髪を撫でる感覚がAに降りて来た。
櫛の歯が頭の表面を薄く引っ掻き、くすぐったい様な、気持ちいいような。
小「はて。ぬしさまの毛並みは私と似ております」
「意外だな」
小「はい。瞳と同じく真っ黒で、短いものなので、てっきり真っ直ぐな直毛かと。いや、嬉しいです」
「嬉しい?」
小「はい。お揃い、というやつですな」
「…ふわふわはお前で充分だ」
小「何か?」
いや何でも、と誤魔化し、櫛が髪に触れる感覚に意識を集中した。
…私もふわふわだったのか。絡まり易いし、正直小狐丸で充分だ。
…あ。不味い。
髪を通る櫛、優しく撫でる手付き、小狐丸の大きく包み込む体、麗らかな初春の陽射し。
構成する全ての要素がAを眠りの世界へ引っ張り込み始めた。
目に蓋が出来たみたいだ。あー…
小「おや、眠ってしまわれたか」
毛並みを整え終わった小狐丸は、自らの主を見て溢した。
小「ぬしさま。お仕事は如何なされまするか」
返答はない。
太陽のぬくもりの中、彼は自分の体より遥かに小さく脆いAをそっと抱き締めた。
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いづみ(プロフ) - 餅田さん» コメントありがとうございます。がんばります! (2020年8月19日 14時) (レス) id: 28595e5e52 (このIDを非表示/違反報告)
餅田 - 続きカモン! (2020年8月1日 23時) (レス) id: b17d16c344 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いづみ | 作成日時:2019年2月28日 23時