【刀剣乱舞】LOVE/LIKE/アイ？【短編集】 (ページ44)

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最終章・本丸襲撃ページ44

仕事部屋で結界の張り直しの準備をしていた。それに10分もすれば遠征から第2部隊が戻って来る。出迎えもしなければならない。仕事部屋は慌ただしい気配に包まれていた。
近侍の物吉貞宗が作成した特上の盾兵がゴトリと落下した。幸運を呼び込むとだけあって、彼は刀装作りが上手かった。
玉を拾おうと身を屈めたその時、窓からビュウと風が強く吹き込んだ。書類が床に散らばる。溜息を吐き掻き集めようとした瞬間だった。

「動くな」

地を這う様な低い声が鼓膜を震わせた。Aの動きがピタリと止まる。
ゆっくり目線を上げる。物吉が敵大太刀に捕まっている。周りには打刀、太刀が合わせて5振。

「大人しく我々に着いて来い」

さもなくば折る、と続けた。

物吉は両手を後ろに回され刀剣を持てない。
仲間を呼ぼうなら彼もろとも殺されるだろう。

物「主様、ボクの事は良いですからっ、逃げて下さいっ…！」

物吉の言葉には胸打たれるが、結界を突破する気配無く物音一つ立てずにここまで到達する敵相手に正直逃げられる気がしない。

それにこれが噂の本丸襲撃ならば、何故直ぐに審神者を殺さない？

　「分かった。着いて行く。だから物吉を離せ」

物「主様！」

　「大丈夫だ」

敵大太刀が物吉を解放した。すれ違いざま、Aは笑い掛けた。

　「物吉、」

鮮血。誰の？Aの体に痛みは無い。
目の前の儚く小さな体が血飛沫を上げながら倒れて行く。

　「物吉！」

敵太刀だった。解放された瞬間に刀を彼に振り下ろした。

　「貴様、何故！」

「無傷で返すとは言っていない。返り討ちにされる可能性があった。ただそれだけ」

敵大太刀の腕がAを拘束する。その大きな手はAの痩せっぽちな体をいとも簡単に覆い隠す。Aは渾身の力を振り絞って刀装を引っ掴み霊力を流し込んだ。
その時障子が開け放たれ太鼓鐘貞宗と数珠丸、長谷部が飛び込んで来た。

　「長谷部！これを！」

長谷部に刀装を投げ付けるとAは敵大太刀に抱き込まれ、連れ去られてしまった。