異変・三日月 ページ28
三「俺たちは主に頼り過ぎたのかもしれない」
布団の上にAを寝かせながら、三日月がそんな事を言った。緩んだ浴衣の胸元を揃え、布団を掛ける。
Aは只の寝不足だった。目の下の隈がそれを物語っている。
三「この間も真夜中に出陣要請があった。もう少し労ってやれれば…」
三日月の言葉は長谷部に向けられているようで、独り言のようでもあった。
長谷部は彼の目に浮かぶ月が異様な光を帯びている事に気付いた。だがそれが何を意味するのかは分からなかった。
彼はこの本丸の初期の頃から存在する刀で、ここの初太刀だった。対して長谷部はここ1.2年で顕現した打刀。忠義心は誰にも負けないと自負しているが、主や本丸の事となると三日月には全く及ばない。
知らない事ばかりだった。三日月が何を考えているのかも、自分や三日月、いや、刀剣男士を主がどう思っているのかも。
Aの寝顔を見て悶々と考えていると、急に腹の虫が鳴いた。顔を赤くして天井を見遣る。
三日月はさて、と立ち上がった。
三「長谷部殿、そろそろ出るか。長居しても仕方ない」
三日月に賛成であるのと、気を使われた恥ずかしさと、自分の食欲とがないまぜになったよく分からない感情で、長谷部は速攻で返事した。くるりと踵を返した所で、
三「俺は厠に行ってから向かう」
三日月の声を背中に食堂に足を向ける。本格的に腹が減ったのだ。
長谷部が部屋を出たのを確認すると、三日月は自らの主に向き直った。膝をつき、手を頰に添える。
三「まさかこんな秘密を抱えていようとは。この俺がすっかり騙された。だが安心しろ。俺は口が硬いし、幻滅もしていない」
手を顎に滑らせ、首、鎖骨をなぞり、浴衣の中に潜り込ませる。胸の頂点で手を止め、満足げな表情で囁いた。
三「俺は主を愛しているぞ、何があっても」
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いづみ(プロフ) - 餅田さん» コメントありがとうございます。がんばります! (2020年8月19日 14時) (レス) id: 28595e5e52 (このIDを非表示/違反報告)
餅田 - 続きカモン! (2020年8月1日 23時) (レス) id: b17d16c344 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いづみ | 作成日時:2019年2月28日 23時