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「……もう、たった一日終わったくらいで、はしゃぎすぎだって」
言葉とは裏腹になんだか優しげな声で寧々に言われ、少しだけ落ち着く。
「まぁ寧々、今日くらいはいいじゃないか。Aくん今回のショーに向けてすっごく頑張ってたんだから」
「まぁ、それは知ってるけど」
ね、と急に腕を引っ張られて肩を組まれる。身長差があるせいで肩を組むというよりかは一方的に肘置きにされている気分だ。
なんだお前、の意を込めて神代を見上げると、何やら意味ありげなウィンクをされた。本当になんだお前。寧々も引いた目でこっち見てるし。
するとそれまで(珍しく)黙っていた天馬が大声を上げた。
「〜〜〜っち! か!! い!!! 近いぞお前ら!!!」
「うわっうるさ」
「おや、それはすまない。でもね司くん、僕達は同じ演出を手掛ける者として強い絆で結ばれているのだよ!」
神代から離れようとする前に何故か天馬が無理矢理割り込んできて俺を引き寄せる。うん、お前も近いぞ???
「お前っ……わかっていてやっているな!?」
「んふふ、司くん、君ってばやっぱり面白いねぇ。全然飽きないよ、君をからかうの」
「類……本当にいい加減に……!」
「ちょっと、痴話喧嘩はもう終わり? ほら、A、早くこの馬鹿二人置いて更衣室行こ。えむが記念にお菓子パーティーしようって」
俺のことを忘れ言い合いを始めた男共の腕から抜け出して、寧々とえむと三人で更衣室へ向かう。
「あたしわかるよ、Aちゃんの気持ち」
「え?」
道中、興奮冷めやらぬまま、といった顔のえむが俺に言った。その表情はいつにも増して楽しそうだった。
「ショーが成功すると嬉しい。みんなが笑顔になってくれるともーっと嬉しい! 嬉しいの気持ちは毎回新鮮で、あたし、それが大好き」
「私も、それわかるかも。何回もショーやってるけど、毎回終わってみると初めての時みたいな感じがする……嬉しい、またやりたい、って」
いつの間にか両手は二人と繋いでいて、俺は引っ張られるようにして進んでいた。
沈みゆく太陽の光が二人の笑顔を照らした。
「だからっ、Aちゃん! Aちゃんが今日感じた『嬉しい』はきっと、これから先もずーっとAちゃんと一緒だよ!」
「え?」
片方の手を引いていたえむが振り返る。
「だって、あたし達、またショーするでしょ?」
「そうだね。ていうか、今更辞めるとか許さないから」
「……っああ、そうだな!」
えむの言う通り、この先も沢山の『嬉しい』を重ねていくのだろう。
そうだとしても、今日感じたこの『嬉しい』は大事にしたいと、思うのだった。
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ありに(プロフ) - 5年ぶりに夢小説を漁ってたらとんでもない神作品に出会ってしまった…応援してます☺️ (2023年3月10日 19時) (レス) id: 1064f8688a (このIDを非表示/違反報告)
ただのせかおた - 最初の注意事項とか舞台挨拶(?)みたいな感じで書いてるのめっちゃ素敵です!!お体には気をつけてこれからも頑張ってください💍応援してます!! (2023年1月21日 23時) (レス) id: 5310fc155c (このIDを非表示/違反報告)
kubota6(プロフ) - この作品めちゃ好きです!応援してます! (2023年1月10日 23時) (レス) @page17 id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
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