続：獪岳と同期の子の話

歪み ページ28

その日の夜。

Aは獪岳の部屋に訪れていた。

二人とも寝巻きを着て思い思いの時間を過ごしていた。


｢獪岳何読んでるの？｣


獪岳は灯りの下で静かに本を読んでいた。Aは後ろに回り頬を獪岳の左肩に乗せて、後ろからピタリと抱きつくように密着する。

獪岳の読んでいるページをサッと端から端まで流すように読んでAは眉をひそめた。

｢...不倫モノ？｣

｢どんな本読もうが俺の勝手だろ｣

｢そうだけど......｣


読書の幅が広いなと、Aは少し感心していた。
 
そしてふと、獪岳ならどうするのか気になった。


｢もし自分が結婚してて、奥さんの他に好きな人が出来たら……獪岳は奥さんと不倫相手、どっちを選ぶの？｣


自分が不倫をする立場になったら、獪岳は最後にどちらを選ぶのだろう。



｢....新しく好きになった女に旦那がいて、その女が旦那より俺を選ぶなら...俺も同じ事をする｣

｢結婚してる奥さんを裏切るんだ？でも浮気相手の女は他の男に乗り換えるかもよ。｣



人のモノほど欲しくなる。そしてそれを手に入れた時、言葉にできないほど幸せで、満たされた気持ちになる。
罪悪感は背徳感に。いけないことをしたときの興奮と快感は忘れられなくなる。だから『そういう事』は楽しいと感じて、もっとしたいと思うようになって同じことを繰り返すの。

人間は愚かな生き物で、何より愉しいことが大好きだから。


「それでも奥さんを捨てて、浮気相手と駆け落ちする？」







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次回過去編です。

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