最悪の誕生日 1 ページ17
ｰ陸side
誕生日の日、俺は家に帰って溜息を吐いた。
メンバーからお祝いを言われ、陣くんにAと過ごすんやろ？と言われた俺は、もちろんAと過ごせる訳が無く。
1人で家に帰り、ソファに倒れ込む。
今この瞬間も考えているのはAのことで。
彼女を想う資格など、俺には無いのに。
溜息を吐いたとき、インターホンが鳴った。
…乃亜か。
また溜息を吐いてのろのろと立ち上がる。
陸「…はい。」
玄関を開けると、そこにいたのは乃亜じゃなかった。
月の光を集めたような銀髪。
鮮やかなブルーの瞳。
A「陸、さん…。」
陸「A…？」
そこにはAが立っていた。
陸「…何？」
募る愛しさを抑えつけて、冷たい声で聞く。
Aは悲しそうに微笑んだ。
A「…これ。」
渡されたのは一通の手紙。
A「お誕生日おめでとうございます。
…結構前に書いたやつなので、渡そうかどうしようか迷ったんですけど…。
これで最後にするから、よかったら読んでください。
それから、これも…。」
Aが握り締めた手を開く。
その手の中にあったのは、俺の家の合鍵だった。
陸「…。」
手を伸ばすと、Aの手が動いた。
俺から隠すように、握り締めた手を背中に回す。
A「これ、持ってちゃダメですか…？」
震える声に、張り詰めていた糸が切れた。
Aの腕を掴んで引き寄せ、ありったけの想いを込めてキスをする。
A「！」
Aの長いまつ毛が震え、そっとその瞳が閉じられた。
彼女の手から離れた鍵が床に落ちて金属音を立てる。
キスには最初からAも応えた。
Aの手が縋るように俺の服を掴む。
俺は最後にAを強く抱き締めて身体を離した。
陸「…帰って。」
A「陸さん、」
陸「帰ってってば。」
A「…嘘ですよね？
最初から私のこと好きじゃなかったなんて嘘ですよね？
私だってそれくらい分かりますよ。
だって陸さん…。」
陸「帰れよ！」
怒鳴った声の鋭さにAが身を竦めた。
A「…ごめん、なさい…。」
Aの綺麗な目から涙が零れる。
Aは床から合鍵を拾うと、俺の手に乗せた。
A「…もう、仕事以外で陸さんには関わりません。
今までありがとうございました。」
Aが俺に背中を向ける。
引き止めたいのに、身体が動かない。
Aの姿が見えなくなる。
俺は扉を閉めて、ずるずると床に座り込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 569人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
直実(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます。美紀さんも気をつけてくださいね。 (2020年8月31日 19時) (
レス) id: ee63cfc73e (このIDを非表示/違反報告)
直実(プロフ) - すいさん» コメントありがとうございます！気付かなくてすみませんm(__)m千春さんと悠花さんは強い女性として書こうと思ってたんです笑強い女性大好きなんです笑 (2020年8月31日 19時) (レス) id: ee63cfc73e (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルスと熱中症に気をつけてくださいね (2020年8月31日 13時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - 泣き足りない！泣き足りないです！しかも千春さんかっこいい！夢主ちゃんもきっと千春さんみたいな素晴らしい女性になるんでしょうね！あぁーやっぱりもっかいもっかい読んで泣いてきます(嬉涙) (2020年7月31日 16時) (レス) id: 3a0286c876 (このIDを非表示/違反報告)
直実(プロフ) - すいさん» お待たせしました！何回でも泣いてきてください！((殴 (2020年7月29日 19時) (レス) id: 993595d907 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：直実
| 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/naomi_shogkazu
作成日時：2020年6月1日 19時
