解いたその手で抱き締めて ページ44
ずっと、辛かった。
誰にも言えず、答えも見付からず。
信じて貰える自信も無くて、ずっと苦しくて。
でも、彼女は分かってくれた。
分かった上で受け入れて、両手から溢れる程の愛までくれた。
彼女の事をもっと好きになった、そんな日のお話。
クラスの子から酷い苛めを受けて、引きこもりになった。
そのまま数週間が経つけど、気持ちは変わらない。
苦しいのだって変わらないんだから。
それでも彼女は、ずっと私の所に来てくれる。
どうにかして私を、また学校に通わせようとしてくれている。
そんな事は分かってるのに。
「…あああっ…!」
突然、叫びたくなった。
枕に顔を押し付け、思った事をそのまま叫びにする。
「何で私は女なの…!?
何で私、ひなちゃんの事好きになっちゃったの…!?」
がちゃっ、バタン。
学校帰りであろう当の彼女が、部屋に入ってきた。
「凜…!」
その場に鞄を置き、私のもとに駆け寄る。
「ひなちゃん…。私って、どっちなの…?
私、自分が分かんなくなっちゃった…!」
知らない内に泣いていた私を、彼女がそっと抱き締めてきた。
「もし私が男の子だったら、ひなちゃんは私の事嫌いになる?」
時間が経って落ち着いてから、彼女に向かって問い掛ける。
「考えた事無いな。
確かに凜は格闘ゲーム得意だし、戦隊ものも好きだったけど、
それ以上に女の子らしさもあるし。
でも、どんな凜でも嫌いになんかならないよ。
凜は凜だからね。」
出てきた答えに、私が詰まってしまう。
同時に、自分がトランスジェンダーなのかも知れない事に気付いた。
「私、本当に怖いの。
心が男の子だったら、ひなちゃんは
私の事嫌いになっちゃうのかなって思って。」
「私は凜が好きなの。
小さい時からずっと一緒にいてくれた凜が好き。
付き合える関係になれた事が何よりの証拠だよ。
何があっても私は凜から離れて行かない。
凜の事、ずっと守ってあげるからね。」
強くて優しい言葉。
少しだけ変わった関係性が、その信憑性を高めている。
「ひなちゃん…、何でそんなに優しいの…?」
「決まってるじゃない。一番大好きな、私の恋人だからだよ。」
どこまでも優しい彼女に凭れ掛かる。
その背中をぎゅっと抱くと、彼女も抱き返してくれた。
「凜、私はずっと凜の味方だよ。」
「嬉しい…。ねぇ、もっとくっついて良い?」
「良いよ。私はずっと凜の側にいるからね。」
鼓動が高鳴っているのは本当の事。
いつか本当の私が分かっても、私はひなちゃんのものでいたいな。
[魔族]貪り尽くすは極上の味 ※裏&グロ注意→←「凜」と「ひなちゃん」
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