私の全ては貴女のもの。 ページ30
一度だけ、凜を怒らせてしまった事がある。
それまでに一度も見た事の無い彼女の表情は、今でも忘れられない。
彼女と付き合うまでは、元々仲の良かった男の子と恋愛関係にあった。
その子と別れてすぐに凜と付き合い出したから、
本当に短期間なんだけれど。
そして、凜と関係を持ってからも
度々彼女の前で元彼の話をしていたのだ。
「今思えば、本当に別れて良かったよ。」
「…ひなちゃんって、本当に元彼さんの事好きなんだね。」
「え、何で?」
「だってさっきから、元彼さんの話しかしてないもん。」
いつも以上に落ち込んだトーンでそう言う彼女。
「そんなに私が嫌なら、別れて良いよ。
元彼さんと仲直りしたいんでしょ?
だからずっと同じ様な話しかしないんでしょ?」
「嫌な訳無いよ。今は凜が好きなんだから。」
「じゃあ何で元彼さんの話するの…!?」
彼女の話し言葉が半ばヒステリックになってきてしまった。
「私と元彼さんを比べるのがそんなに楽しいの…!?
そんなに忘れられないなら最初から私の事振ってよ…!」
「違う…!私はそんなつもりで…!」
「触らないでよ…!
他の人の話ばっかりするひなちゃんなんか、だいっきらい…!」
触れようとした手を撥ね退けられてしまう。
そして彼女は何も言わず、ベッドに潜り込んでしまった。
何も出来ずに数分間が経った。
このまま帰ると溝が深くなってしまう。
懸念した私は、彼女のいるベッドに入った。
「……別に帰っても良かったのに。」
「謝ってないのに帰れないよ。」
「私の事なんてもう気にしないでよ。
元彼さんの事好きなんでしょ?」
「もう好きじゃないよ。今は、凜の方が大事。」
言いながらそっぽを向いたままの彼女を抱き締める。
「…本当に、そう思ってる?」
「思ってるよ。」
「じゃあこれから先、二度と元彼さんの話はしないでね。」
「うん、ちゃんと忘れる。
ごめんね、凜。大好きだよ。」
彼女に抱き締めている手を解かれたかと思うと、
体ごとこちらを向いてきてくれた。
そのまま胸元に顔を押し付けられる。
「…ばか。ばかぁ…っ!」
泣きながらの短い罵倒を、私はただ受け止めた。
凜の目の前で元彼の連絡先を消すと、
それを確認した彼女に密着された。
座っているベッドの縁が、ぎしりと音を立てる。
「大嫌いって言ってごめんね。」
「言わせる様な事をした私が悪いの。だから凜は悪くない。」
「ひなちゃん、ちゅーして?」
「良いよ。こっち向いて…。」
これから先、私の全ては凜のものだよ。
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ