Episode14 -5 ページ43
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「よし行くか」
「うん、お願いします」
再びバイクにまたがって走り出す。
明るいコンビニの敷地から道に飛び出すと頼りない街灯が点々と行く先を照らしていた。
もう少し行くと都心に入るそうで明るくなると潤くんが教えてくれた。
夜がまた深まってきている。
大きな月が照らす道はまだまだ先へと伸びていた。
和くんの家がどこにあるのか私にはわからないから残りの道がどれほどあるか見当がつかないけど。
どこまで行くのだとしてもただ私たちは夜を走る。
先へ先へと。
前にしか道が続かないことをよくわかっているから。
潤くんの言うようにしばらく走るとバイクは都心のビル群のあたりに差し掛かった。
遠くにシンボルタワーのオレンジ色が見える。
あれが点いているということはまだ日付は変わっていないらしい。
夜だというのに都心は明るい。月の明るさに負けないくらいの街をバイクは駆け抜けていく。
道行く人たちは足早に同じ方向へと歩いていく。
多分駅へと向かっているんだろうなと私は想像する。
そこから電車に乗ったとしたら私たちはどれだけ知らない場所まで行くことが出来るだろうか。
夢物語を想像するのはたぶんあまりにも今が現実離れしているから。
妙な浮遊感のまま私は潤くんにしがみついていた。
潤くんに出会う前の私だったら駆け落ちなんてものを実行する日が来るなんて想像もできなかっただろう。
私の未来は翔さんと共にあって、特別な自由も特別な不自由も、お互いに感じることはないまま上手に日々を生きていたのだろう。
よく言えば平穏で、悪く言えばつまらない。
あるのは決められた未来と決まっていた過去。
今日という日に自分が何をするのかなんて私たちには必要のなかったことだった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
