Episode13 -4 ページ36
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木々の向こうで白い明りがちらついた。
「警備がもう来たか。急ごう」
「うん」
手を取って走り出そうとして、私はもう一度だけ部屋の窓を見た。
開いた窓から風に揺られたレースカーテンがはためいている。
その様はまるで私たちに手でも振っているかのようだった。
「ごめん潤くん、行こう」
ぎゅっと掴む手に力を込める。
目が合うと、夜色の瞳に強い意志を灯して、潤くんがしっかり頷いた。
「走れ、お嬢様！」
「うん！」
潤くんの声に合わせて走り出す。
人がいるのとは逆の方へ。
思い返してみれば潤くんに出会った最初の頃もこうして手を引かれて走っていた。
私たちはいつも、何かから逃げてばかりだ。
神様は何が不満だろう。
私と潤くんを追い立てるものは、今日は何の形をしているだろうか。
庭は月明かりにぼんやりと照らされているだけで暗い。
足を取られそうになりながらひたすらに走る。
「どこから出るの？この先の裏門？」
「ああ。表通るよりいいだろ。出たとこに単車止めてある」
この屋敷には正門のちょうど反対側辺りに裏門がある。
車一台が通れる程度の小さな出入り口だ。
私たちは運よく誰にも見つからずに裏門にたどり着いた。
裏門はライトが灯っているから夜の中に浮かび上がるように立っているけど、静まり返っていて人っ子一人いない。
いつもなら警備の人が必ず立っているのに、どうして？
「なんで警備がいないの？」
「知らねぇ。けどチャンスだ、行くぞ！」
潤くんに強く手を引かれるまま私たちは裏門を通り抜けた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
