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Episode10 -7 ページ20
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私が育ったのはそういう家だ。
誰よりも私が一番よくわかっている。
「だから、ごめんね潤くん…もう…会えないかもしれない」
自分で告げたのに涙がこみ上げそうになって声が震えた。
潤くんには伝わってしまったかもしれない。
電話の向こうで震える息の音がした。
『……そんなことない。その家、場所はどこだ』
「え？」
『家の住所だよ。お前が出れないなら俺が行く』
唐突に告げられた言葉に涙が引っ込む。
「えっと…」
湾岸エリアにあるこの家の住所を告げる。
『そっか、わかった。ちょっと時間かかるかもしれないけど、待ってろ。必ずお前に会いに行くから』
力強い声に、ほらやっぱり、と思う。
潤くんはこんな事態でも自分で未来を切り開こうとする力があって。
実際に切り開いてしまうんじゃないかと。
彼はそういう男の子だと、私は信じている。
『お前は頑張ってくれたから。今度は俺の番だ。……お前は、信じて待ってろ』
「……うん」
だから。
「うん、待ってる」
私が彼を待つことは、私に手を伸ばしてくれる彼に自分から手を伸ばすことになればいいと思う。
潤くんと少し話しただけだけどその力強い声が折れかけた心を支えてくれた。
空には月が輝いている。訳知り顔で世界をぼんやりと照らす月。
この月を潤くんも見ているだろうか。
同じものを見ているうちは、きっと大丈夫に違いないと、そう思うことくらいは自由であればいいと思う。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
