今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:43,693 hit
小｜中｜大
Episode9 -7 ページ12
.
見下ろした潤くんは顔をどこかにそむけている。
やがて、「はあ」とため息とも声ともつかない息を吐き出した。
「俺のせいなのは嬉しいけど、無理はすんなよ。お前の手の方が大事だ」
今度は潤くんの顔が真っすぐに私を見上げていた。
ちゃんと見えなくても、その目が心配してくれているのが手に取るようにわかる。
潤くんは、ちょっとだけ過保護だ。
過保護な人なんて周りにたくさんいるのに、潤くんのぶっきらぼうなそれがくすぐったい。
「ありがと、潤くん。でも大丈夫。ちゃんと成し遂げてみせる」
「そっか」
潤くんはそれ以上何も言わなかった。
私の決意が固いことは、この短い時間でも伝わったのだろう。
「あのね、潤くん」
「ん？」
私は、改めるように潤くんの名前を呼んだ。
聞き返す声は空気に溶けそうなほど柔らかい。
「私、お父様に直談判しようと思うの」
「直談判？」
驚いたような潤くんの声が聞こえる。
私はスマホを耳に当てたまま頷いた。
「潤くんと一緒にいたいって、ちゃんと伝えてみようと思って」
思えば私は、私の意見で生きてきたわけではなかったのだろうと思う。
ちゃんと向き合ってきたつもりでも、その実決められた道から一本の道を選択していただけで、潤くんのように自ら道を切り開いてきたわけではなかったのだろう。
そこから、私は変わらなければいけない。
今の私には、潤くんが見せてくれた世界があるから。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 263人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
