83ねむ ページ34
運動会場はざわめきと興奮した悲鳴に包まれていた。
その注目のど真ん中にいるのは、もう見慣れた金髪と青い瞳。王子様と言ったらこの人、みたいな姿かたちの彼。私の先輩で副会長の、ヴァーノンさんである。
今、彼のチームの棒は……数学は苦手だけどそうだな、大体角度45度くらいに傾いている。そんな斜めった、常人ならとっくに地面に落ちておかしくない角度の棒の上に涼しそうに両足で立っている。
そんなヴァーノンさんだ。
「そういう魔法が、あるの?」
「バランス感覚を整える強化魔法は存在する。……だがあれはそういう次元の話じゃねぇだろ」
確かに。
足を棒に糊付けでもしたのかっていうレベルだけど、そうなら軽々しく棒の上を移動したりしない。もはや純粋にバランス感覚が神かかっているのだろう。そういう次元の話でもない気がするが。
驚異で脅威のバランス感覚を持つ副会長にかなう相手がいるはずもなく、角度45度のまま相手の棒へ突進していった副会長チームはそのまま圧勝を収めた。斜めった棒に悠々と腰に手を当て上着をはためかす副会長は格好良かった。そのポーズのブロマイドほしい。
そして現在青組一位、次に赤組、そして白組となっている。
しばらくの間知り合いが一人も参加していない競技を応援しつつ(相変わらず起きる爆発とかの妨害を見て遠い目をしつつ)、ついに地味に緊張する借り物競争の時が来た。
エドを見送り、遠くで手を振ってくるリデルを見送る。
どうやら最初に走るチームのうちの一人がリデルのようで、配置につく彼を私はテントから見ていた。
「楽しそうだな」
「テオせんぱ、……テオフィール様」
「くく、この口調の時は畏まらなくていいって言っただろう」
え、と思いながらあたりを見回してみると、気づけばほかの生徒たちは私たちから一定の距離を取っていた。それはさながらモーゼの海割り。
テオ先輩のことを気遣ってか、イケメンすぎて近寄れないかのどちらかだ。
成程、この距離なら少し声を潜めれば彼の口調も私の馴れ馴れしい呼称も気にならないだろう。
「テオ先輩は楽しんでますか?」
「あぁ、もちろん。とはいえ、あれだけ口を酸っぱくして注意しても問題を起こす輩が後を立たなくてな、頻繁に無線に気を取られてしまう」
「行かなくていいんですか?」
「今この学園の中で、だれが学園内最重要マークがついていると思う?」
しばし首を傾げた。
「俺かなぁ」
「正解だ」
ふは、とテオ先輩は笑う。近くのチワワが気絶した。
140人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - アスヤさん» 最初から見ていただいて感激です……エド君ストライクと言っていただけで嬉しいです!これからもアスヤさんをきゅんきゅんさせられるような小説を書けるよう頑張らせていただきますね!コメント本当にありがとうございました! (2019年8月4日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
アスヤ(プロフ) - 作品最初から見ましたがエドくん好きです!どストライクです!更新無理せず頑張ってください! (2019年6月4日 22時) (レス) id: 85154871a9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 歩美さん» 大好きといっていただけで光栄の極みです!地毛がそっくりですと!さぞ美しい髪をされているのでしょうね。頑張らせていただきます、ありがとうございます! (2019年5月14日 13時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
歩美(プロフ) - 初めまして!シリーズを最初から読ませていただいています!!とても面白いのに、キュン要素をしっかり取り入れてもう大好きです。主人公の地毛が私にそっくりで感動しております。更新頑張ってください! (2019年5月13日 17時) (レス) id: 45ec4d7ed1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 礼羅さん» あー泣かれないで!つティッシュ 書籍化……できたらいいですね!(無理)ありがとうございますお気持ちとてもうれしいです!エド!これからも絡ませていくしかない!亀更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2019年2月5日 22時) (レス) id: 30865517cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月8日 12時