とある英雄王と出来損ないの兄の話

Ep.21 -槍兵と愉快な仲間たち- ページ27

※ここから先
藤丸→Aの要素あります。

藤丸目線


『よぉ、カルデアの野郎と盾のお嬢さん！
王からの頼みだ。
特別にお前に力を貸してやる！』

そう声を響かせ
しゃらり、と涼やかな音と共に
草むらから勢い良く飛び出して来たのは…

暗闇に溶ける様な黒髪。
深い海を映す紺色の目。
所々で煌めく涙方の宝石。
腕で涼やかな音色を奏でるブレスレット。
美しく通った鼻筋。

色々な美しい人を見てきた俺でも
息を飲んでしまう程の人。

この状況の中
涼しげな顔で立つ黒髪の美青年。

俺が何も言えないでいると、
少し不機嫌そうにこちらを見た。

『おい、アンタに話しかけてんだ。
さっさと答えろ。』

そう言われて俺は、意識を取り戻し
慌てて口を開く。

「ぜ、是非お願いします！！」

それを聞いて、
謎の美少年は口を愉快げに歪ませた。

『はっ、任せろ！』

そう言うと、槍を構えて
マシュと小さな女の子の隣に立った。

それを見て、エルキドゥ(？)は
不敵な笑みで口を開く。

「まぁ良い。
手っ取り早く、キミたちの旅を終わらせよう。」

美青年はそれを馬鹿にする様に
軽く鼻で笑う。

『そんなバカな真似は俺がさせねぇよ。
掛かってこい、この阿呆が。』

其れを区切りに
お互いが地面を蹴った。


ーーー


「はっはっは！
いや、うまくいった、うまくいった！」

白い髪の毛のお兄さんが
笑いながらそんな事を言う。

周りには先程までと同じ
黒い杉の森が広がっている。

俺とマシュはちんぷんかんぷんだ。
対して、黒髪の美青年は
その黒髪を軽く掻き揚げながら
お兄さんに笑いかけた。

『…成程。
流石は王に呼ばれた魔術師マーリンだ。
奴さんを誘導して、夢に嵌めたって訳だな。』

その問いに、
マーリンと呼ばれたお兄さんは
肯定の意味で頷く。

「飲み込みが早くて助かるなぁ。
キミは…我が王に使えているのかな？
先程、そんなことを言っていたからね。」

彼はその言葉に首を縦に振って答える。

『あぁ、俺は最近王に誘われたんだ。
んで、カルデアの野郎を連れてこい
って頼まれたんでな。』

マーリンは納得した様に頷いた。

「しかし
ギルガメッシュ王も酷い事を言うなぁ。
私の事を信用しないなんて…。」

落胆した様にそんな事をマーリンは言うが
大して悲しさが伝わってこない。

美青年は呆れた様に口を開く。

『おい、こんな茶番なら歩きながらやろうぜ。
ここは嫌な魔力が充満してやがる。』


そう彼が言ったから
俺達もそれに従って歩き出した。

Ep.22 -不思議な気持ち-→←Ep.20 -槍兵とカルデアの出会い-

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す