とある英雄王と出来損ないの兄の話

Ep.18 -初めまして、金星の女神- ページ24

「はぁー…
ムシャクシャするわねぇ。」

はるか遠くまで澄んだ青空。
そんなウルクの空高くに
美しい黒髪の女性が一人
空中浮遊している。

その目は攻撃的な目の色をしており、
真っ直ぐにジグラットを見つめている。

「…じゃ、あの気に食わない男でも
殺しに行ってあげるとしようかしら！」

ニヤリと笑った美女は、
その口からとんでもない言葉を吐き
物凄いスピードで
ジグラットに向かって降下した。


ーーー


『…は？？悪ぃ王サマ。
もっかい言ってくれ。
…俺が、アンタの護衛だと？』

信じられない、
と言った風にAは
目の前で玉座に座り、
脚をゆるりと美しく組んでいる
ギルガメッシュ王に
〔自分の任務〕について聞き返した。

「然り。…まぁ、そうだな。
偶には北壁に出て貰う事もあるだろうが。

だが、基本はウルクと我を守って貰う。
この…人類最後の砦をな。」

そう聞いて、彼はため息ながらに頷いた。

『…そういう事なら仕方ないな。
だが、アンタに護衛なんて要るのか？』

そう彼が不思議そうに聞くと、
王は軽く笑いながら口を開く。

「ふはは、嬉しいことを言う。
だが…今の我はあくまで魔術師の真似事だ。
何かあった時に対応しきれるとも限らん。」

じゃあ真似事なんかすんなよ。
と言いたげな顔をするAだったが
はっ、と息を飲んで
何かに気づいた様に天井を見上げる。
そして、
不敵な笑みを王に向けた。

『…そうかよ。
ならしゃあねぇな。請け負った。


丁度、敵さんのお出ましらしいしな。』


そう言うと同時に、
王の正面からエネルギー弾が飛んでくる。

Aは背中に括り付けている槍を手に取り
すぐさま引き抜く。
そして、王の目の前に素早く躍り出て
そのエネルギー弾を弾き返した。

すると、同じ方向から
10発ぐらいの弾が一気に飛んで来た。

Aは落ち着いた槍捌きで全て弾き返し
にやりと笑いながら声を張り上げる。

『ビビってねぇで出て来いよ、神もどき！』

相手を挑発する言葉を発すると同時に、
金切り声を上げながら
黒髪の美女は姿を現した。

「だれが神もどきですってぇぇ！？
人間の分際で随分と生意気じゃないｯ！！！」

どうやら正面入口の上空付近から
狙い撃ちしていた様だが
Aに煽られたせいか、
正面から突っ込んで来た。

『はっ、本当の事だろうが！
お前からは…
人間と神が入り交じった気配がしたからな！』


そう言いながら槍を構え直すと
物凄いスピードで
黒髪の女神に斬りかかっていった。

Ep.19 -金星の女神と神殺し-→←Ep.17 -おはよう、ウルク-

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す