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「…なんでそんなこと、れ、永瀬に言わなきゃダメなの？」
「…理由はないけど、俺がやってきたことが間違いか確かめる為。」
「何それ、」
間違えて廉と言いそうになったところを急いで訂正して、廉の目をじっと見る。
大好きだった茶色くて透き通った瞳は今は何処と無く濁って見える。
「…どういう関係？」
「……別に、ただの仲良くしてもらってる先輩。」
決してウソはついていない、事実を述べているだけだ。
のに、
「ふーん、そんな風には見えんかったけど」
永瀬の返事は一歩上を行く。
「…何が言いたいの？」
「ただの先輩とあんなことするんってこと。」
心臓の音が激しくなる。
暴れ出す脳内をアラームが鳴り響く。
まさか、見られてなんて、
「……」
何も言い返せない。
でも、あれは先輩からしたら冗談とかノリの延長戦みたいなもので感情は1ミリも入っていないだろう。
そんな言い訳騙しの言葉をグルグル頭の中で唱えていると
少しの足音には聴覚が反応しない。
俯いてフルネームで書かれた自分の上履きしか見えていない視野に永瀬と記された上履き。
驚いて顔を上げると、すぐ近くに顔があって、
また、吃驚して体が後ろへ下がる。
それを許さない永瀬の長い腕が伸びて私の腕をグイッと引っ張る。
必死に離れようとするも叶わない男の力。
「…っちょ！なにす…っ！」
そのまま顔が近づいてきて、目と目が交わると唇同士が引っ付く。
放課後で生徒があまり来ないような階段踊り場でも、もしかしたら、ここを通る生徒や先生がいるかもしれない。
そんなところで、キス、された。
頭がショートして、でも、冴えて思いっ切り永瀬の肩を飛ばす。
「……」
「……」
「…なんで…っ、」
目から飛び出し頬を伝う涙。
これは生理的な涙なのか、なんなのか私にはもうきっと、見当がついてる。
私と永瀬は仮にも幼馴染なのだ。
私が彼に想いを寄せていたとしてもきっと届かないと思っていた関係性だ。
此奴を好きになったって、なってなくなって嫌な事しかないじゃないか。
永瀬くんに近づくな、ブス。
幼馴染特権まじうざい。
頭を過ぎる悪口。
沈黙の二人の間に流れた私の通知音。
それで、ハッと気づいてビクッと体を揺らす。
黙って振り向いて走り去る私。
そんな私には
「…もう、我慢しいひん。」
なんて言葉聞こえてないよ。
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作者名：麗夢 | 作成日時：2018年7月20日 14時
