無形の落とし子 ページ29
『う……う…』
頭が痛い。
ずるずると足を引きづりながら歩く。
黒い道が出来て、俺が零れていく。
俺は、一体何なんだ。
「やはりお主も神話生物なのではないか。何故あんなに我に怯えていたのか……尚更わからん」
『は、すたー』
「無形の落とし子か。また派手にやられたな。お主ネクロノミコンは持っておらんのか」
そんなものは持っていないと目で訴えると、ただ一言そうかと頷き俺を自室まで運んでくれる。
体の一部がが廊下や服に垂れて黒いシミを作っていく。
違う。俺は、俺は人だ。
だからシュブ=ニグラスの生贄になった。
俺は人間なんだ。
「お主、この世界に入ってきてから適当な記憶を埋めつけられておるな。実際はシュブ=ニグラスの生贄になどなっておらぬはずだ」
「イライとの関係も空間が示し合わせた擬態処理だろう。我々の様な異型に人の兄弟などおらぬ」
『あいつの、記憶は』
「……それも、空間が作りあげた甘美なまやかしに過ぎぬ」
そうか。
……そうか。
もう、たくさんだ。聞きたくもない。
俺には最初から何も無かったのか。
自分が悲劇のヒーローみたいに振舞って。恥ずかしい。
ああ、早く、この悲しい夢が終わりますように。
起きたら、またいつもみたいに……
いつもって…なんだっけ
もう2人も食べたし、許されないよな。
目尻から黒い液体がこぼれ落ちる。
これ俺の体の一部じゃなかった？
「終わりが近いな。お主は大きく破損しすぎた」
「その体は諸刃の剣だ」
「安心せい。お主がやられても、本体は無事ぞ」
『…なあ、最期に聞かせて欲しい。ここは、この世界は一体何なんだ？』
「ここはドリームランド。我ちと旅行中でな」
……旅行中とか。こっちは本気で困ってんのに。
ふざけてんなあ。
……
……
……
「おや、器として機能を成さなくなったか。まあ仕方なしよの」
『我もそろそろ人間体を解きたかったのだ』
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ゼロ(プロフ) - なんかクトゥルフ？とかわからないけど読んでみたら面白かったです！ (2020年6月21日 23時) (
レス) id: c3efaf6a5b (このIDを非表示/違反報告)
外国製烏(プロフ) - 月さん» ありがとうございます！光栄です！ (2019年6月1日 13時) (レス) id: 19489dbd8a (このIDを非表示/違反報告)
月 - 面白いですね！ (2019年5月31日 19時) (レス) id: 235ab58054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：外国製烏 | 作成日時：2019年5月24日 18時
