214話 危篤（3） ページ15
医者は日露戦争に出兵したことがあるらしい。
俺と杉元は顔を見合わせ肩に下げた銃を取り出し、医者に向けた。
杉元「バレちまったんなら話しは早いぜ」
A『自分の治療をする羽目になりたくないのなら大人しく従え』
アンケシ「やっぱこうなるのか・・・」
ーー
医者は先に月島軍曹の診察をし、次に百を診た。
医者と月島軍曹の会話を杉元は理解できないので俺が代わりに伝える。
A『医者が俺たちが日本の兵士か聞いた。
月島軍曹が今――』
『アシﾘパとアンケシさんを連れ戻しに来ただけ。回復したらおとなしく日本に帰ると言った』
『・・・・百は重傷だからもっと清潔な場所で手術しないと駄目だとよ』
杉元が目を細める。
月島「病院のほうが機材が揃ってると言っている」
鯉登「ダメだここでやれ」
医者が「彼を助けたいんだろ？」と怒鳴る。
杉元「わかった運ぼう」
鯉登「おい杉元いい加減に・・・」
俺は鯉登少尉を手で制した。
A『百にはいろいろ聞くことがある。
まだ死なせない』
月島「【ロシア軍に通報すればせっかく治療したのが無駄になる】だとさ」
ーー
百を犬橇に固定して病院に連れて行く準備をする。
杉元「よしッ 出発だ」
鯉登「尾形を救ったとしてあいつが改心して本当のこと話すなんて期待してるほどおめでたくはないよな？」
鯉登少尉が杉元に確認するように言う。
杉元「救いたいのはあいつじゃねえ」
アシﾘパは俯いたまま一言も発さない。
アンケシさんはなんて声をかけようか迷っているようだ。
A『アシﾘパ』
アシﾘパがゆっくりと俺を見た。
当たり前だけど、この子もまだほんの13〜14歳の子供だもんな。
と、納得するほど・・・その顔は幼稚で不安気に俺を見ていた。
A『なに辛気臭い顔をしてんだ。お前は』
アシﾘパの頭に手を置くと、小さく微笑む。
A『真冬の川に落ちても生きてた男だぞ。
今更こんなもんで死ぬかっての』
『脱走兵とは言え北鎮部隊で活躍した兵士だぞ』
アシﾘパ「・・・・・・ありがとう。松崎」
アシﾘパが前を向いた。
俺たちは橇を進め、病院に向かう。
病院に着くと百は早速運ばれていき、俺達は外で待機だ。
暫く待つと医者が出てきてアンケシさんは医者の話を静かに聞いていた。
エノノカが俺たちの方を振り返りポツリと呟いた。
エノノカ「もうすぐ死ぬって・・・」
心臓が、波打った。
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白文鳥 - ととさん» 嬉しいお言葉を有難うございます！訳あってこの作品はpixivにお引っ越ししました。励みを有難う御座います！そちらの方で頑張ります！ (2022年1月8日 19時) (
レス) id: 50fca864bb (このIDを非表示/違反報告)
とと - ここまで一気に読み進めてしまいました。続きが読みたくて、急いで単行本を読みました笑 主人公と周りとの距離感がたまらなく好きです。 (2021年6月24日 22時) (レス) id: 2c3ad1893b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2021年1月18日 21時
