「 惚 れ さ せ 屋 」佐野玲於

stage 28 ページ28

Reo side





あー、どうしてくれんのマジで。

想像以上にイメージ変わっててビビったわ

クールビューティなイメージだったAさんが、
今日見たらいきなり可愛くなってんだもん


変わったのは前髪らしいけど、それよりも





「 え、気付いてくれたんですか 」




俺が隼とAの雰囲気が変わったって話をしてたら

Aさんに会話が聞こえたのか、彼女は嬉しそうに微笑んだ


うん、前より全然可愛いし

むしろ俺今のAさんの方が好き。


つか、なんでそんなに嬉しそうな顔すんの




極め付けは、「 俺、そっちのが好き 」って言ったら

時が止まったみたいに俺の事を見つめて
少しだけ紅くなっていた気がした





玲於「 … うーわ、どうしよ 」

隼「 ん？なした？」


玲於「 けっこーガチで欲しいかも知んない 」




最初は、簡単に手に入らなさそうな人を落とせたらラッキーじゃんくらいの考えだった

Aさんならどうやって落とそうか

Aさんは何をしたら喜んでくれるのか
どんな男が好きなのか



そんな事ばっかり考えてたら、なんだか「好きにさせてやる」って気持ちよりも

「 好きになってもらいたい 」って気持ちの方が強くなってしまう






隼「 … え、あげないよ？コレ哲也さんにもらった秘伝のコーヒー豆なんだから 」


玲於「 バーカ、ちげーよ 」





欲しいのは、Aさんの心

どうやったら俺に向いてくれる？



さっきの顔は、期待してもいいってこと？

まるで恋に似たような、Aさんへのこの不思議な感情が俺の心を蝕んでゆく



…






玲於「 … あのさ、今日の夜 会える？」




久し振りに俺から電話を掛けたら、受話器の向こうから甲高い声が喜んでる。

ちょっと前ならそんな声さえも「こいつ可愛いな」なんて思っていたけど

今となっては正直 俺の好奇心を縛り付けるものへと変わっていた。





玲於「 … うん、じゃあ今夜。わかった 」




話がある、と彼女を呼び出した

ちゃんと言わなくちゃ。もう終わりにしようって

たとえ暇つぶし程度に付き合っていたとしても、彼女の事を好きだと思ったのは少なくとも嘘じゃない。


だから別れを告げるのは 心が痛い




…



玲於「 … っ、痛ってぇ 」




初めて女の人に本気でビンタされた

明日撮影が入ってる事なんて、これっぽっちも考えてない彼女だからこその行動だ。


俺はまだジンジン痛む頰を押さえながら

コレで良かったんだ、と苦笑いした




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