*Only winner* (ページ43)

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性格の悪いことを言っている自覚はある。
でも、ずっと引っかかってた。

『……嫌な言い方してごめんね』

「あ、いや……」

『海青君の気持ちを疑ってるわけじゃないよ。好きって言ってくれることは素直に嬉しいし、あの時の私のことを印象深く覚えていてくれるのも有難い』

「……はい」

海青くんは神妙な顔で頷く。

『あのライブで私の姿を見て感動してくれたっていうのも、もちろん気持ち自体は嘘偽りの無いものだと思ってる。

けど……また嫌な言い方するけど、その感動、同情と履き違えてないかなって、ちょっとだけ引っかかってたんだよね』

そんなつもりで言ってないことは百も承知だ。
わざわざ掘り返さず有耶無耶にしておいても、べつに何の支障も無い。

けれど、もしも履き違えていたとしたら、それは違うんだと訂正しておきたかった。

『いいんだよ、全然、同情でも。今さら同情なんかされたくないって言うつもりも無いし。
無理を押してライブ出て、倒れそうになりながら必死でパフォーマンスして、体調悪くても頑張ってますって、そうやって同情買ってるように見られても仕方ない道を選んでるのは私だから』

「っ……」

海青くんは痛々しい表情で唇を噛む。
ほら、そういうところ。

私が自分を下げるのを痛々しい顔で聞く、そういうところがまさに “そう” なんだ。

『そんな私の姿を見て「感動した」って言ってくれるのも、それがファンの人たちなんだとしたら否定はしないよ。
その人たちに見えてるのは、表向きの私だから。

でも、海青くんは違う。裏の裏の、カメラには絶対映せないようなところも全部見てる同業者でしょ？
本当の裏の姿を知った上で、そんなに大変な状況でもやり切ったっていう部分に心が動かされたんだとしたら、それはたぶん感動じゃなくて、同情だよ』

病気を抱えながらステージに立ち続ける姿に感銘を受け、苦しみを隠して笑う姿に美しさを感じる。

裏側を知らないファンから投げかけられた言葉なら、それは感動で片付けられただろう。
でも、すぐ側で裏側を見ていた同業の人が胸を打たれたと言うのは、それは感動じゃない。

自分で自分の身体を痛めつけながら、それでも表舞台を諦めきれない人間に対する “同情” だ。

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