*Only winner* (ページ4)

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◆TEPPEN 2021冬ページ4

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スタジオ内に漂う、何とも言えない緊張感。

たかが番組の企画と言えど、『対決』と名の付くものであるなら。
しかも、その題材が自分のアイデンティティを色濃く形成していると言っても過言では無いものなら。

負けるわけにはいかない。

『芸能界特技王決定戦 TEPPEN 2021冬』のオファーを頂いたのは、2020年も年末に差し掛かる頃。

実はこの番組、私には縁のある番組だった。

と言うのも、ピアニストだった父が生前この番組で、名物企画『ピアノ対決』の審査委員長を務めていた過去があるのだ。
父が挑戦者の方にコメントしている姿を、画面越しに見ていた記憶が薄らと残っている。

番組の名物企画であるピアノに加えて、今回初めてダンスが種目に加わった。
もちろん、私の元へ来たオファーは、ピアノ対決。

『……TEPPENってあれだね。龍友くん思い出すね。
けん玉もうやんないのかな。もしあったら、龍友くん今でも余裕でてっぺん獲れちゃうんじゃない？』

「……今この場でそんなこと考えてる余裕あるの、アンタだけだと思うわ」

『私もそう思う』

現場に流れる異様な空気とは裏腹に、私自身は現場入りからリハーサルまで、緊張の『き』の字も無く段取りを終えてついさっき楽屋に戻ってきた。
今も、いつもメンバーが居る時の楽屋と同じテンションで世間話に花を咲かせている。

私の相変わらずな姿を見て、マネージャーは呆れた顔をした。

「リラックスして臨めるのは良いことだけど、共演者さんの集中を乱すような振る舞いは控えなさいね」

『分かってる。カメラ回ったらちゃんとするよ』

「Aの『ちゃんと』は、どこまで信用していいのか分からないから怖いんだけど……」

マネージャーは心底心配そうにそんなことを言う。
心外だなあ、いつもちゃんとしてるのに。

『カメラ回ってる時はちゃんとしてるじゃん』

「どの口が言ってんのアンタ。いつも気ぃ抜いた顔してる時がっつりカメラに抜かれてるからね」

『げ、バレてた』

「当たり前でしょ。ちゃんとしてよ、本当に」

軽口を叩き合っていたら、マネージャーの携帯電話から着信音が鳴り響く。

「ちょっと出てくる」

『いってらっしゃい』

パタン、と扉が閉まり、1人になった楽屋。
寒い時期だし温かい紅茶でも飲もうかとケトルをセットしたところに、コンコンとノック音が響いた。

誰かが挨拶にでも来てくれたかな、と扉を開けると、よく見慣れた顔がそこに居た。

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