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「緊張してる？」

『……少し、ね』

12月28日。
ついに、当日を迎えた。

前日にGENERATIONSのLIVE×ONLINEを終えて、その余韻が冷めやらぬまま迎えたこの日。
高揚感と、いつにない緊張感と、寂しさと。
いろんな感情が渦巻く中、舞台裏で1人ポツンと佇んでいると、杏奈に声をかけられた。

「珍しいね。A、緊張しなさそうなのに」

『GENEのライブでもここまで緊張したことない』

「そんなに？」

ふわりと笑う杏奈は驚くほどいつも通りで、ラストライブを控えているとは思えない。

『杏奈は、』

「ん？」

『緊張、しないの』

「んー……緊張より、寂しい気持ちのほうが強いかもしれない」

『……』

「きっと私にとっては、今日が人生最後のライブになるから」

杏奈は、解散後の進路として、女優の仕事を中心にやっていく選択をした。
アーティストとしてステージに立つのは、今日が本当に最後だ。

杏奈だけではない。
晴美さんや、のんちゃんや、乃々華。
事務所を離れるスダンナとYURINOさん。

LDH所属のアーティストとしてのライブは今日が人生最後になるであろう人が、こんなにも存在する。

「今日は、貴重な時間になるね。
まさかAと柚那の歌で踊れる日が来るなんて思わなかったから、それがすごい楽しみ」

『私も、柚那とまたこの歌を歌う日が来るなんて想像してなかった』

9年前、VBA3で、新ユニットのボーカル候補に課題曲として渡された楽曲。
それが「Why?」

合宿で何度も何度も練習して、当時のファイナリストたちと一緒に歌った、思い出の曲。
当時、最終審査にボーカルとして進んだのは柚那ただ1人で、私がこの曲をステージで歌うことは一度もなかった。

この曲を、4人でパフォーマンスしたい。
新ユニット候補として共にオーディションを駆け抜けた柚那、乃々華、杏奈の3人から提案され、是非、と引き受けた。

「この曲歌うのも、9年ぶり？」

『そうだよ。あんまりにも懐かしすぎて、歌詞思い出すのに時間かかった』

「あはは、私も振り起こし時間かかったよ」

2人で顔を見合わせ、笑い合う。

『……良かった、披露出来る日が来て』

「……うん」

『良い時間にしよう』

「うん。よろしくね」

『こちらこそ、よろしく』

開演まで、あと30分。
E-girlsのラストステージの幕は、もうすぐ上がる。

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