*Only winner* (ページ13)

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◆Valentine's Day ページ13

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『ちょこ、いる人～』

リハ終わりのスタジオに響いたゆる～い呼びかけ。
カレンダーを見て、ああ、今日は2月14日だったと思い出す。

「おお、今年も作ってきてくれたの？」

『ん。時間あったから作った』

「今年は何にしたの？」

『ぶらうに～～～』

「さっきから、なんでそんな緩いねん」

『え、なんとなく』

隼とメンディーくんの問いかけにゆる～く答えて龍友くんにツッコまれるA。
平和な空間だな、おい。

「今年もTRIBE全員分作ったの？」

一足早くAが持ってきた袋を覗き込んだ玲於。
なんだかんだ毎年1番楽しみにしてるのはコイツ。

『うん。マネージャーとかスタッフにあげる分も用意したから、200個ぐらいブラウニー焼いたよ』

「えっぐ。めっちゃ大量生産してるやん」

数を聞いて顔を顰める裕太くん。
その隣で涼太は俺ら以外の人たちの分が入っているであろう大量の紙袋を指差した。

「それ、他のグループに渡しに行く時間ある？」

『先輩たちの分はマネージャーに預けた。後輩グループはいま別の部屋でリハしてるらしいから、後で渡しに行く』

毎年この時期はお菓子の準備に追われているA。

忙しいし量も多いし、気遣わなくていいよってみんな言ってるけど、「私がやりたいから」って準備してくれる。

猫みたいに気まぐれで自由人なわりにこういうところでマメなのが、Aが愛される所以なんだろう。

『はい、涼太くん』

「毎年ありがとうね」

『いえいえ。はい、玲於くん』

「おー、ありがと。
……え？メッセージカード付いてんじゃん」

玲於の一言に、全員が驚愕してAのほうを見る。

『うん。今年は付けてみた。
はい、隼くん』

「全員分？」

『うん。一言だけだけど。
メンさんどうぞ～』

「……えっ！？しかも手書きじゃね！？」

カードを確認したメンディーくんの驚きの声が響く。
手書きって、マジか。

『うん、手書きだね。
はい、龍友くんと裕太くん』

「よおやるなあ……」

「手ぇ痛くなってへん？」

『大丈夫だよ。ありがと』

みんなが感心している間に配り終えたAが、右手に小さな包みを持って俺のもとへ歩いてくる。

『はい、リーダー』

「サンキュ」

《頼れるリーダーいつもありがとう》

綺麗な字で書かれた、たった一言。
Aの優しさが込められているのがちゃんと伝わってくるメッセージ。

「……こういうとこが可愛いんだよなあ」

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