好っきゃ【芸人】【短編集】

隣の席/かまいたち 濱家 ページ9

貴女Side 学パロ



私の隣の席の濱家隆一さんは、めちゃくちゃ怖い。


野球部の主将をやっているのに、髪は茶髪で耳にはピアスを開けて、制服を気崩している。



そんな彼は巷でも有名な不良で、通り名は東淀川の毒蛇である。


そんな怖い人と隣の席になってしまった。


席を動かした時に、隣の人が来るのを待っていたら濱家さんが来てしまった。


そんな彼は、私を見るなりすぐに目を逸らしたのだ。



その事もあり、私の中での濱家さんの印象は最悪となっている






濱家さんと隣の席になってから、数週間たったある日。


『あっ』


授業中に消しゴムを落としてしまい、その消しゴムが転がった先は、なんと濱家さんの足元だった。



ちらりと濱家さんを見ると、消しゴムには気付いていない様子である。



これはバレずに取れる。


そう確信した私は、わざとシャーペンを落とし、シャーペンを拾うついでに消しゴムを拾おうとした。


あと数センチで消しゴムに手が届く、という所で濱家さんに声をかけられる。


「何してんねん」



小声だがとても低い声に、びくっと肩が揺れる。



一旦席に戻ろう。



『消しゴムを落としてしまいまして』



少し遅れたが、濱家さんの質問に答える。


「消しゴム??」


と言うと足元にある事に気がついたようで、取ってくれる。



机の下にもぐり、元の体制に戻ろうとした濱家さんは戻るのが早く、机に頭をぶつけていた。


「あだっ」


『え、大丈夫ですか??』


「大丈夫や」


そんな天然な部分もあるんだなんて思っていると


「ほれ」


そう笑って消しゴムを返してくれた。



そんな顔して笑うんだ。



新しい発見をした気がして嬉しくなる。





「次は落とさんようにな」



『あ、はい。ありがとうございます。』





お礼を言い終わると、おうなんて言って机に顔を伏せてしまった。





「(なんや今の笑顔、可愛すぎちゃうか?)」





ピアスをしている彼の耳が赤くなっていることなんて知らずに、私はノートに文字を書いていった。







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