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カチカチカチカチカチカチ……。
あれ？シャー芯出ないや。
もうないのかな？
今は数学のプリント学習。
ひたすらプリントをやっていくだけの授業と言うよりは自習に近い時間だ。
違うのは数学の先生が居るのと、誰も喋っていないこと。皆、この先生が怖いのだ。
私はそっと、筆箱を取り出して、シャー芯が入ってあるあの…箱？いや、なんか小さい入れ物…？を取り出した。
太さは0.5である。
カチカチカチ…
うん、出た。
シャー芯の頭が出たのを確認し、またプリント学習に戻る。
最初の十分間だけ普通の授業をして、残りの四十分はプリント学習。
はっきり言ってもうやりたくない。
脳みその使いすぎだ。
糖分が足りない。疲れた。
「あと十分ー」
「えぇ!あと十分も!?」
「疲れたー。しんどー」
「おらおら、諦めんなよ〜」
『…はーい…』
豚共も疲れたらしい。
やはり心とかはあるんだな。豚でも。
豚に少しばかり共感しとくか。
「………先生〜!!」
一人の女子が手を挙げる。
このクラスで一番背の低い雅ちゃんだ。彼女はそこまでうるさくないし、かと言ってそこまで静かでもない、普通の子だった。
「どうした、雅」
「あの、トイレ行きたいのですが…」
「あぁ、いいぞ。行ってこい」
「ありがとうございます」
雅ちゃんがそそっと教室の後ろのドアから出ていく。
言葉使い、結構良いんだね。
にしても珍しい。雅ちゃんがトイレなんて。
しかも、静かなこの時間に言うとは。
勇気があることで。
「………トイレだってよ!」
男子生徒一人が大声を出す。
この学年唯一の不良で、今年初めて同じクラスになった星宮だ。
「雅がトイレだとよ!」
「えー、それ普通じゃん？雅ちゃんもそういうことあるよ〜」
「女の子の日かも？」
「いやいや、男とじゃねえの!?」
どういう根拠だ。
周りの女子はそれを否定する。
しかも必死になって。まるで友達を守ろうとしているかのようだった。
こいつら、そういう心もあるのか…？
私は少し困惑した。
こいつらは星宮と一緒になって雅ちゃんを笑うと思っていた。
でも違うなんて…。
「いや、絶対そうだな!」
「雅、最近彼氏できたやしいじゃん？」
「三組だっけ？」
「だから、雅ちゃんは違うって!普通にトイレで……」
「怪しいなあ？そうやって庇うとかあ…」
「本当よ!」
「雅ちゃんはそういう子じゃないし!」
皆が口々と口論する。
女子と男子の雅ちゃんをかけた勝負だった。
「お前ら静かにしろ!!」
先生は空気だった。
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作者名：ムクロねこ | 作成日時：2015年7月6日 0時
