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「はー疲れた疲れた!」と爽やかに言いながら隣に座った新一くん。疲れた顔が爽やかで、イケメンと持て囃されるわけだと一人納得する。
「蘭ちゃん、嫉妬してたけど」
「はぁ? 何に?」
「せっかく新一が戻ってきたのに子供たちとばっかり遊ぶーって。それからコナンくんがいなくて寂しいとも言ってた。どっちでもモテモテで羨ましい限りだよ」
「そんなんじゃないですって」
口では否定しながらも、顔は嬉しそうに緩んでいる。蘭ちゃんのときと同じくにやにやしながらいじると、彼は顔を真っ赤にして焦った。これほどいじり甲斐があるカップルはいない。
新一くんは真っ赤なままゴホンと咳払いを一つし、「結婚されるそうですね!」と話を変えた。話の変え方まで一緒なんだと言えば、彼は「そういうのいいですから」と反抗した。
「まさか降谷さんが結婚するとはなぁ……」
「ねえそれどこ情報? あたしが連絡しようと思った人みんな知ってたんだけど。……赤井さん以外」
「降谷さんです。嬉しそうに話してましたよ」
「あの人……赤井さん嫌い治らないな。ジョディさんにはきみから?」
「はい、たまたま会ったので」
新一くんは悪びれもせず頷いた。彼、悪いことはしてないんだけど、ただ自分で報告したかった気持ちはある。結果的に喜んでもらったからいいんだけどね。
嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちでいると、新一くんがニヤけて「安室A……いや、降谷Aかな?」と呟いた。その呟きに、戸籍上は降谷Aだが、当面は安室Aで通すということを教えてやった。
「どっちも似合いますね」
「ありがと。……蘭ちゃんたち、嘘吐いたってわかったら怒るかなぁ」
「何年かあとには笑い話になってますよ」
本当の苗字は降谷なのに、彼の仕事上親しい彼女らにも安室と嘘を吐かなければならない。そのことを彼女らが知ったら怒るか不安だったのだが、彼女らは優しいし、きっと「そうだったんですか!」と笑い飛ばすだろう。容易に想像がつく。
「とにかく、おめでとうございます。今度、蘭たち連れて遊びに行きますね」
「うん、いつでもおいで。元板前の本気見せちゃう」
「そりゃ楽しみだ。……ほら、お迎えが来ましたよ」
公園の入り口に停まったRX-7を見て、新一くんが微笑む。「またね」と手を振って、賑やかな公園を出た。
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時