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「なんで?」と訊かれた。なんでってなんで? 忘れられてたら悲しい&恥ずかしいってわからないの? 小学生ならともかく、中身は高校生なのに。
コナンくんはテーブルに顎を預け、到底理解できないと言う。
「だって仲良しだったんでしょ? 仲良い人ってそんな簡単に忘れられるかなあ」
「もう十五年も前だよ。彼も子供だったし」
「十五年前って、安室さん十四才だよね。小学一年生なら忘れちゃうかもしれないけど、中学生のお兄さんだったら忘れないと思うよ」
「……計算速いねぇ」
「ボク算数得意なのー」
苦し紛れに出た「計算速いね」も流される。ずっと笑っていた彼は急に真面目な顔になり、「それってただ怖いだけなんじゃないの」と囁いた。
図星ってこういうことなんだなあ、と思う。完全に彼の言う通りだ。あたしは彼に会うのが怖いだけ。今の彼が、あたしの知っている彼じゃなかったら、と思って臆病になっているだけ。
ウジウジしていても仕方ないのはわかってる。でも、あたしにとっての彼がかけがえのない存在であるように、彼にとってのあたしが同じであるかはわからないのだ。たぶん告白するかしないかで迷っている人と同じ気持ち。自分と相手が同じ気持ちじゃなかったら、次からは今までと同じようには接せない、みたいな……。
「信じられないの?」と主人公は言った。
「安室さんが信じられない? そんなに難しく考えなくたっていいのに」
コナンくんは何てことなさそうに、さもそれが当然であるかのように言った。
ぱちぱち、と頭の中の何かが弾けるような感覚がする。"信じる"という言葉に、ハッとさせられた。あたしは零くんを信じていなかったのか。
あたしは彼を信じていたつもりだった。零くんが言うなら信じるよ、と言ったことも記憶に新しい。でもそれは、本当に『つもり』だったんだなぁ……。あたしは彼を、信じきっていなかった。
「Aお姉さん、安室さんが大好きなんでしょ? 信じても大丈夫だよ、あの人は記憶力いいし、絶対に覚えてるから。でなきゃあんなに…………、やべっ」
「あんなに、なぁに?」
「う、ううん、なんでもなーい」
絶対に何かあるけど、今は訊かないでおこう。
そのとき、梓さんがこちらのテーブルに来た。呼んでないはずなのにと不思議に思っていると、彼女は「帰ってきましたよ!」と言った。
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時