突然の悲報 ページ41
零くんがいなくなって、仕事に行く以外は廃人同様の生活を送った。師匠はそんなあたしに気づいていたけれど、特に何も言わず、さりげなくいつもより多くの仕事を回してくれた。
零くんのことはいつも頭から離れなかったけれど、仕事に打ち込んでいる間は寂しさだけは消える。だが師匠に教わってつくる料理は、あたしの心を反映してか、荒んだ味がした。
なんなんだあの子は。勝手にやってきてあたしに依存させておいて、また勝手に戻っていくんだから。せめて直前に一言言えよ、「戻りま〜す」って。いやダメだ。それはそれでムカつく。
「荒れてますね」
「そーだよ荒れてる。マスターは変わらないね」
「わたしはいつでも変わらないことを心がけていますから」
零くんが来るまで通っていたバーのカウンター席にどっかり座り、「ううぅう〜〜〜あぁあああ〜〜〜〜」と奇声を発していると、BFFのマスターが苦笑とともに言った。
変わらないなんてムリだよ、と若干八つ当たり気味に言う。マスターはグラスを磨きながら努力をすることが大切なんですと返した。さすがマスター歴三十年のベテラン。渋い。
出されたお冷の氷を鳴らしたり、グラスを弾いたりと暇を弄びながら、ムシャクシャする気持ちをマスターにぶつける。
「す〜〜っごくかわいがってた子がいたんだけどねぇ、一昨日消えちゃったの、彼……」
「おや、かわいがってた子ですか……。もしかして、ここ二か月くらいずっと顔を出さなかった理由ですか?」
「おっ、せいかーい」
「いえ」
謙虚なマスターは「何かおつくりしましょうか」とスマートに話を変えた。彼も話題の転換が得意だったなあ、なんていちいち彼と結びつけつつ、「バーボン、ストレート」と答える。やばい思ったより重症だ。
「バーボンですか。あなたは変わりましたね」
「今もテネシーとかライのほうが好きだよ。ただ、たまには違うのも悪くないでしょ?」
「はい。少々お持ちください」
テネシーの甘い風味も、ライのスパイシーな感じも大好きだ。バーボンは最後に呑んだのがずいぶん昔だけれど、パワフルで美味しかった気がする。今は元気がほしい。
ちなみにあたしはストレートをがぶがぶ呑めるような酒豪じゃないので時間をかけねば呑めない。マスターはそれを見越して「今日はもう閉めますから、ごゆっくり」と言ってくれた。
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……! 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね! 更新頑張ります。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです!さっき更新された話もまじ良かったです! 更新待ってますっ!! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです! 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? コメントありがとうございました! (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月21日 19時