* ページ17
「……落ち着いた?」
「……うん」
どれくらい経っただろうか。零くんの震えも止まり、落ち着いたのを確認した。だが体制はそのまま、抱きしめた状態だ。
彼は泣き腫らした顔を見せたくないだろうし、ハグはストレス解消にいいって言うし、ぶっちゃけあたしは役得だし……の、三つの理由からだ。彼も文句は言わない。
「……本当に、うれしいよ。ありがとう」
「うん、どういたしまして」
「ずっと着ける。Aからのプレゼント、大事にするよ。と言っても、服もご飯も全部Aからのプレゼントのようなものだけど……」
「でも、それは特別大事にしてくれるんでしょ?」
「うん」
零くんはロケットをぎゅっと握りしめた。あたしはただ頭を撫でるのに飽きて、零くんの髪を弄り始めていた。指を通すと、すとんと落ちる。さらさら。
成長期真っ盛りの零くんだけど、身長はまだあたしよりちょっと小さいくらいなので、抱きしめやすく甘やかしやすい。抱き心地もとてもイイ。これからも度々抱きしめてやろうと思った。
沈黙が訪れたが、それは心地いいものだった。
「……これ、写真入れられるんだな」
「そうだよ〜、普通は大切な人かペットの写真を入れるの」
「僕、Aとの写真を入れたいな。いい?」
「いいっていうか、逆にいいの? あたしに気ぃ遣わなくてもいいんだよ」
「Aとがいいんだ。会ったばかりだけど、僕はAが大好きだから」
ン"ッッッッッッ!!
ダメだこの子将来は殺戮兵器になる……戦争で重宝されてしまう……! 戦争なんかクソくらえ。ただでさえクソみたいなものなのに、零くんを引きずり込もうだなんて……死刑だ。ハイ死刑!!
「A? どうかしたか?」
「零くん、戦争なんか行っちゃダメだよ!」
「僕は警察官になるから戦争は行かない」
警察官て戦争に参加しなくていいんだ???
「写真、今度撮ろっか。どこか遊びに行ったときにでも」
「お仕事は?」
「師匠に頭下げて休ませてもらうよ。たぶん再来週以降になっちゃうけど」
「それまで僕がいたらだね」
「縁起でもない……零くんは再来週まで絶対いる!」
「確証は?」
「……と信じよう」
「ないんだ」
零くんが声を上げて笑ったので、あたしも釣られて笑ってしまう。泣き疲れた零くんはその日、ベッドであたしの腰に抱き着いて眠った。
569人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
あの日、未来のトリプルフェイスは拾われた。【名探偵コナン】
2.原作の知識を与えられたからには全力で関わりを拒否します。【ヒロアカ】
もっと見る
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……! 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね! 更新頑張ります。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです!さっき更新された話もまじ良かったです! 更新待ってますっ!! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです! 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? コメントありがとうございました! (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月21日 19時