ある日、未来のトリプルフェイスを拾った。【名探偵コナン】

お仕事 ページ11

まだ目が覚めていないのか、どこか遠くを見ている零くんに朝ご飯を出す。髪がはねてる寝起きのショタ(と言うほどショタでもないけど)安室さんの破壊力ってビルス様にも勝るよね。

あたしが出した朝食をゆっくり口に運ぶ様子を、目の前でじろじろ見つめる。目が！！ ぱっちり開いてない！！ カワイイ！！



「うま……」

「お口にあったようだね。よかった」

「うま」

「うん。それでね零くん、あたしこれからお仕事だけど、一人でお留守番できる？」



四才児が対象のような言い方をしてしまったが、零くんは食べるのに夢中で気づいていない。こくり、と頷くと、もぐもぐと口を動かし続けた。

うまかろう。そりゃそうだろう。なんせあたしがつくったからな。ふはは。



「……Aの仕事って、何？」

「料理人。まだ見習いだから仕事と言うより修行だけど」

「ふーん……」

「おいし？」

「うま」



かわいい。



「父が板前でね、六才くらいから料理教わってた。中学卒業と同時に修行に入ったから高校は行ってない。専門学校行くか迷ったけどやめた」

「へー……」

「まあなんでかって十九までに料理極めたかったからだけどね！！ あのころの将来設計聞く？ 海上レストランに雇ってもらって未来の海賊王の船に乗ってコックすることだったよ」

「そー……」

「上達すればするほど『極める』が遠ざかって行ったけどねえ。料理はおもしろいよね」

「んー……」

「おいし？」

「うま」



なんだこいつかわいいかよ。話聞いてんのかわかんないくらい生返事なくせに美味しいか訊くとうまって返ってくんの何。うまって何。うまって。

きれいになっていくお皿を見て、零くんを見て、残ってる料理を見る。すぐになくなってしまいそうだ。嬉しいことである。



「時間、大丈夫なのか？」

「え？ ……うっわまってやばい遅刻する！ じゃああたし行ってくるから！！ お昼は冷蔵庫の中に入れといたやつ食べて！！ 夜は早めに帰ってくる！！！」

「んー」



立ち上がってばたばた玄関に走ると、後ろから零くんが着いて来て、困惑している時間もなくコートを着て靴を履いた。

「いってきます！！！ 戸締りしっかりね！！！！」と騒がしく玄関を出て行くと、「いってらっしゃーい」と声が追いかけてきて……え、と驚いてうしろを向いても、ドアが閉まってしまっていた。

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